田舎の山に「草食系クマ」が増加した意外な背景

野生動物の「グルメ化」が止まらない

しっかり管理されている人工林の場合、植えて20年も経てば低層は草や低木が茂り、中層も広葉樹が入り枝を広げている。定期的に間伐を施して林内に光を入るようにするからだ。スギやヒノキが高く伸びた後なら草や雑木に被圧される心配もない。むしろ林業家は、土壌を豊かにするために草を残す。草がないと、降雨で土壌が流出するからだ。「もし下草のない人工林を見かけたら、そこにシカが出没した証拠」と林業家は言う。

一方で「手入れ不足の人工林」はどうか。たしかに密生して暗くなり草が一本も生えていない荒れた人工林もあるにはある。だが、多くの放置林は、スギやヒノキが枯れて倒れ、ギャップ(林内の開けた空間)をつくる。そこに広葉樹が侵入して来る。とくに若年時に数回間伐された後に放棄された山は、雑木や雑草が繁茂しやすい。それがスギやヒノキを被圧しているから「荒れた」といわれるのだ。しかし繁った雑木は、動物のエサにもなる。放棄された人工林が、その後針広混交林に移行しているところも多くある。そんな森は、決して不毛の砂漠ではない。広葉樹林と比べると少ないかもしれないが、野生動物に十分なエサと隠れ家を与えている。

また人工林では、森林整備という名の間伐・除伐が行われる。密生した植林木を間引きしたり、合間に生えてきた広葉樹などの雑木を伐採したりする作業だ。しかし、切り倒せば高みにあった樹冠部分が地面に落ちる。幹は利用するために搬出することもあるが、梢や枝葉はその場に切り落として残す。これがシカなどのエサとなる。また切り開いて地面まで光を入れたら草や稚樹が生えるから、これも格好のエサの提供だ。広葉樹の場合、切り株から萌芽が出る種も多いが、この新芽もご馳走になる。

作業員によると、間伐・除伐作業をしていると、現場近くにシカが現れ、伐倒を待っているそうだ。倒した木々の枝葉を早く食べたいのだろう。

シカが好むのは「外来牧草」

さらに山間部の道には、意外なエサが大量にあった。斜面に草が繁っているのだ。道路(農道、林道・作業道を含む)を通す際、山肌を削ると新しい斜面ができるが、そこに光が当たり、草が生えるのだ。よく見ると、生えているのは外来牧草が多い。牧草の種子を土留め用に斜面に吹きつけることもあるからだ。家畜のエサとして改良された牧草は、冬も青々と繁って栄養価も高い。当然、シカは好むだろう。

また、最近は人工林の皆伐が進んでいる。一定面積の山の木を全部伐ってしまう行為だ。ときに数十ヘクタールも裸地になる。そこは日当たりがよく、雑草が繁茂する。シカやカモシカにとって食べ放題のエサ場だ。跡地に植林したら、その苗も美味しいエサだろう。

次に里山はどうか。近年人の手が入らなくなり、荒れているとされる里山だが、農地の耕作が放棄されて「荒れる」と、雑草や雑木が繁る。実を付ける草木も多くあるから、むしろエサは増える。人間にとって「荒れた」と感じる山や休耕地が、野生動物の豊富なエサ場となっているのだ。最近では山を切り開いてメガソーラーを築くケースも増えているが、そうした場所もシカのエサ場にもってこいになっている。

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