日銀が動いても「1ドル150円の終わり」が見えない 3年連続「物価2%超え」でも「確度足りない」
裁量を広げる背景には、先行きを見通すのが難しい中で先手を打ちやすくしたいという思いもあるだろう。アメリカの長期金利の思わぬ高騰と、それが招く歴史的な円安。日銀をとりまく市場環境はきわめて不確実だ。
金融政策決定会合後の記者会見で長期金利が1%に近付いたのは想定外だったのかという問いに植田総裁は「可能性としては意識していたが、私どもの物価見通しが上振れしてきた」と語った。アメリカ国債の利回り上昇が「わが国の金利に及んできたことも背景にある」(植田氏)と指摘した。
思わぬ海外金利の動きが為替に影響し、今後の物価水準を考えるうえで日銀に試練をもたらしている。7月時点で1ドル=140円程度だったが、現在は1ドル=150円と10円も円安が進んだ。
価格転嫁の影響が長引いている
アメリカでは堅調な経済環境が続き、FRB(連邦制度準備理事会)は政策金利を高水準で維持する引き締め姿勢が鮮明だ。そして、その期間が来年末近くまで長引くと予想されている。一方で、日銀はYCCやマイナス金利政策を続け、緩和姿勢を変えておらず、植田総裁も「外国の金利動向が為替レートの主な変動要因」と説明する。
物価見通しの引き上げについて、「輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が長引いている」(植田氏)ことが背景にある。
足元の円安はエネルギーや食料品など輸入品の物価高を助長しており、植田総裁も物価見通しの上振れに円安の影響はあるかとの質問には「若干、その影響を織り込んでいる」と語った。