日銀が動いても「1ドル150円の終わり」が見えない 3年連続「物価2%超え」でも「確度足りない」
なにか物差しに基づいて判断するのではなく、フリーハンドを得たという点では、今回決めたイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)の柔軟化も同様だ。
7月の会合では、10年物国債金利を指し値オペ(利回りを指定しての無制限の国債買い入れ)で抑えこむ上限をそれまでの0.5%から1%に引き上げたが、今回の決定では1%を「メド」に置き換え、指し値オペの利回りは「金利の実勢をふまえて適宜決定」とした。
長期金利のコントロールは手放していない
確かに、上限値を明示して長期金利をコントロールしようとすれば、金利が上限値に到達した時、際限なく購入する羽目に陥る。その副作用をなくすための「YCC柔軟化」だが、今回の決定で日銀は長期金利のコントロール自体を手放したわけではない。
会見で植田総裁は「1%を継続的に大きく超えることは考えていない」と述べるにとどまり、「どの水準で、どのタイミングで抑え込むか」という裁量はかえって日銀当局に委ねられている。
コントロールの判断理由として植田総裁は「投機的な動きか市場実勢か」という点も挙げたが、投機と実勢の区別が難しいことは、自身が過去の会見で認めているとおりだろう。
これまで大規模緩和を進める段階では、日銀は物価目標や国債買い入れを行ううえでの目安を示し、金融政策の先行きの方針を示すこと自体を緩和効果につなげてきた。しかし、正常化に歩を進める現状では、それらは政策判断の縛りになるとして、数値を不透明にしつつ、状況に応じて判断できる裁量を広げているように受け止められる。