採用で「スキルより価値観」を重視すべき納得理由 「経営を教える会社」がこだわっている採用基準

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グロービスがこの「異質の効用」を重視している理由は、組織としてのクリエーティビティーが高まり、イノベーションを生み出す可能性が高まるためです。イノベーションの父と呼ばれるヨーゼフ・シュンペーターによると、「イノベーションとは新結合である」と提唱されていますが、まさにグロービスは異質と異質との融合によって、イノベーションが生まれていくと考えています。そういったクリエーティビティーを重んじる新たな企業文化を作り出し続けるべく、この「異質の効用」を追求することを掲げています。

なんでも多様性を追求すればいいわけではない

せっかくの機会なので、ここで組織における多様性のあり方について確認しておきましょう。「組織において多様性が重要である」ということについては論をまたないことだと思いますが、皆さんは、そこで言う多様性とは何を指しているかについて具体的に考えてみたことはあるでしょうか? 組織における多様性とは、具体的に何が多様であると良いのでしょうか? 何でも多様であればある程、望ましいのでしょうか?

これらの問いに対しては、ぜひ読者の皆さんそれぞれの解を見出していただきたいと思っていますが、採用ポリシーに「Valueの共有」の原則と、「異質の効用」の追求を掲げるグロービスの考え方を共有しておきます。

グロービスでは、保有能力や物事を見る視点そのものもそうですし、それらの差異につながる国籍・性別・宗教・年齢・性的志向等については多様な方が良いと考えているため、「異質の効用」を追求すべく多彩な個を重視して採用しています。

一方で、大事にしたい価値観や目指すビジョンについては多様であることが良いことだと考えてはいません。なぜならば、会社や組織は世の中に数多存在し、それぞれに異なる存在意義やパーパスを掲げています。そうした中で、組織というのは、とある目的の実現のために集まっているものである以上、その全員が共有できるビジョンや価値観(価値観については、完全一致しているというよりは、大切にしたい通底する価値観)があることが重要であると考えています。

このように組織においては、多様化させたほうが良いものと、共有化・共通化させたほうが良いものとを、一緒くたにすることなく、きちんと切り分けて考えることが重要です。

内田 圭亮 グロービス経営大学院教授

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うちだ けいすけ / Keisuke Uchida

グロービス経営大学院教授。慶応義塾大学法学部法律学科卒業、グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了。アクセンチュア株式会社にて経営コンサルティングに従事した後、株式会社出前館の上場に寄与。その後、グロービスにて、法人向け人材育成・組織開発のコンサルティング、経営管理本部長を経て、現在はコーポレート・エデュケーション部門マネジング・ディレクター兼中国法人の董事を務める。共著に「グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ」(ダイヤモンド社)がある。

 

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