「将来、何になりたい?」聞く親が子を不幸にする訳 若者たちが活力をもつ社会にするために必要なこと

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内田樹
思想家の内田樹氏(写真:ヒラオカスタジオ)
「成熟した大人」が少なくなった社会の危機を前に、私たちはどのように豊かさを取り戻したらよいのか。新著『街場の成熟論』を上梓した内田樹氏が語る、再建への道しるべとは?(全2回中の2回目/最初から読む

国の豊かさ=公共財の豊かさ

――いまや国民の税負担は、江戸時代の「五公五民」並みと言われるほど増しています。なぜ私たちの国力は落ちつづけ、国民の生活はいっこうに豊かにならないのでしょうか。祝賀的なイベントには多額の公金が注ぎ込まれているのに……。

五輪や万博のような祝賀資本主義が「原因」で日本の劣化を招いているのではありません。そういうものにすがるほかに経済的浮力を得ることができなくなった日本資本主義の衰退がこういうむなしいイベントのかたちに結果しているのです。

国の豊かさというのは、公共財の豊かさのことです。私有財産の総和がどれほどでも、その富が一部の人間に排他的に蓄積されていれば、国は貧しい。問題は公共財なんです。たとえ私財は乏しくても、高等教育まで無償で受けられ、医療も無償で受けられ、住宅も公営のものが無償で提供されるなら、その人はかなり豊かな生活が保障されていることになります。

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