《プロに聞く!人事労務Q&A》大震災で死亡したり行方不明となった従業員に対して労災保険は適用されますか?
<通勤災害>
(1)従業員が会社を出て帰宅途中又は家を出て会社に向かっている途中で、地震や津波に遭って保険事故が生じた場合
通勤災害の適用を受けるための「通勤」とは、「住居と就業の場所を合理的な経路及び方法による往復の行為」でなければならず、その経路を逸脱したり、中断した場合には通勤災害とはなりません。しかし、今回については、通勤時における被災の状況がわからない場合であっても、明らかに通勤とは別の行為を行っているということでなければ通勤災害として認定することとしています。被災労働者が死亡したり、行方不明の場合で、被災した従業員やその遺族が自分で判断ができない場合については、労働基準監督署において保険給付の請求書を受け付けてから調査することとしていますので、まずは請求することが必要でしょう。
また、会社からの帰宅途中で避難警報が出たため、避難所等へ向かう途中で保険事故が生じた場合も前述と同様の取り扱いとなります。
(2)通常は電車で通勤しているが、地震のため電車のダイヤが大幅に乱れているため、通常より2時間以上早く自宅を出て会社へ向かっている際にケガをした場合
会社に早く行かなければいけない事情がある場合には、その事情の範囲内で早めに出勤しても通勤として認められます。なお、この場合でも途中で逸脱や中断をした場合は通勤とは認められないことになります。
(3)いつも電車で通勤しているが、電車が復旧せず、会社はオートバイ又は自転車での通勤を認めていないが、車の渋滞も激しく、オートバイ又は自転車を使って通勤していて負傷した場合であっても、合理的な経路及び方法として、通勤災害として認められることもあります。
なお、地震当日は、被災地近隣又は東京でも電車が止まってしまったので、何時間も歩いて家に帰ったり、その日はホテルや帰宅困難者のための施設に泊まって、翌日帰った人たちも多くいました。この場合でも、帰宅の途中で居酒屋でお酒を飲むなど、通勤のための合理的な経路を逸脱したり又は中断をした場合でなければ、その途中で負傷した場合には通勤災害の適用を受けることができます。
東京都社会保険労務士会所属。法政大学法学部法律学科卒。日本法令(人事・労務系法律出版社)を経て石澤経営労務管理事務所を開設。
商工会議所年金教育センター専門委員。東京都福祉サービス第三者評価者。特に労務問題、社内諸規定の整備、人事・賃金制度の構築等に特化して業務を行う。労務問題に関するトラブル解決セミナーなどでの講演や執筆多数。
(東洋経済HRオンライン編集部)
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