ところが、ファーウェイは水面下で捲土重来を期していた。同社は2023年8月29日、ハイエンドの新型スマートフォン「Mate 60シリーズ」を発売。その中のMate 60 Proを分解したカナダの技術調査会社のテックインサイツは、同機種に搭載された麒麟9000sが回線幅7nm(ナノメートル)の高度なプロセス技術を用いて製造されたという分析レポートを発表した。
「麒麟9000sは、中国の半導体産業がEUV(極端紫外線)露光装置なしでも技術的進歩を成し遂げられることを示した」。テックインサイツのダン・ハッチソン副会長は、レポートの中でそう述べた。
Mate 60シリーズは中国市場で大きな人気を博し、品薄状態が続いている。「われわれは今、緊急体制を敷いてMate 60シリーズを増産している。この製品を1人でも多くの消費者に手に取ってもらいたい」。ファーウェイの端末事業部門のCEO(最高経営責任者)を務める余承東氏は、9月25日の新製品発表会でそう語り、品薄の解消に自信を示した。
専門家の予想を超えるサプライズ
今回の発表会の前まで、Mate 60シリーズの品薄の原因は麒麟9000sの製造時の歩留まりが低く、十分な生産量を確保できないことにあると、半導体業界の専門家の多くが考えていた。それだけに、ファーウェイが麒麟9000sの搭載先をタブレット端末のMatePad Proにも広げたことは、専門家の予想を超えるサプライズだった。
市場調査会社カウンターポイントのシニアアナリストを務めるアイバン・ラム氏は、財新記者の取材に対して次のような見方を示した。
「ファーウェイという(慎重な社風で知られる)会社は『備えなき(無謀な)戦い』を挑んだことがない。十分な量の半導体を調達できる道筋を整えたうえで、自社設計チップの採用再開に踏み切ったのだろう」
(財新記者:張而弛)
※原文の配信は9月25日
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