「最先端IC封じ」をかわす中国ハイテク産業の野望。先頭はファーウェイ、自国完結のサプライチェーン

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サイキャリアの看板
3月下旬に上海で開かれた半導体の国際展示会で注目を浴びたサイキャリア(写真:Getty Images)
ここ数年、好況に沸いてきた半導体業界が曲がり角にさしかかっている。『週刊東洋経済』5月10日・5月17日合併号の特集は「半導体 異変」。トランプ関税の影響や変調を来すAI投資の動きを追った。
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中国の産業界がAIに欠かせない最先端IC(集積回路)の国産化を急いでいる。米中ハイテク摩擦の焦点であり、米政府は技術の対中禁輸で開発を封じてきた。ところが最近、通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)を先頭に実績を重ねつつある。

「『ICチップが不足し、基本ソフト(OS)が欠けている』という懸念はすでに和らいでいる」。中国共産党機関紙の人民日報によると、ファーウェイ創業者の任正非CEOは習近平国家主席が2月に主催した民営企業家の座談会で、そう訴えた。

中国・香港メディアの一部は、任氏がこの場で国内2000社と共同で「スペアタイヤ計画2.0」を発動すると語ったと報じた。半導体、工業用ソフトなど重要分野でエコシステムを再構築し、2028年までにサプライチェーン全体で70%超の「自主化率」を目指すという。

「アメリカと激しい衝突を迎える」

ファーウェイのスペアタイヤ計画は事業継続計画(BCP)の一種だ。同社は03年、米同業大手モトローラへの身売り交渉を進め、合意寸前に至ったことがある。

あらかじめ米社傘下に入っておき、欧米市場の開拓で摩擦が起こるのを避ける狙いだったが、交渉は土壇場で白紙に戻った。自社での事業継続を余儀なくされた任氏は「10年後に米国と激しい衝突を迎える」ことを覚悟し、スペアタイヤ計画の準備を指示したのだ。

計画は①04年設立の子会社、海思半導体(ハイシリコン)によるIC設計、②12年に始めた独自OS「鴻蒙(ホンモン、英文名はハーモニーOS)」の開発──が2本柱だ。米政府が18年からファーウェイ向けを含む対中制裁を発動すると、計画は真価を発揮した。最もわかりやすい成果が、23年8月発売の高機能スマートフォン「Mate 60 Pro」だ。OSには米グーグルの「アンドロイド」ではなく、ハーモニーOSを搭載。さらに注目を集めたのが、7ナノメートルの先端プロセス(製造技術)を使ったロジック(演算)ICを積んでいたことだった。

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