「最先端IC封じ」をかわす中国ハイテク産業の野望。先頭はファーウェイ、自国完結のサプライチェーン
1つは半導体製造装置メーカーの育成だ。中国・上海市で3月下旬に開かれた半導体の国際展示会「セミコン・チャイナ」では深圳市政府系の装置メーカー、深圳市新凱来技術(サイキャリア)のブースに黒山の人だかりができた。
サイキャリアは21年設立の新興企業ながら、24年にファーウェイと共同で「自己整合四重パターニング(SAQP)」と呼ぶ技術の特許を取得したとされる。SAQPとは露光を複数回行ってICの微細化を進める「マルチパターニング」技術の一種だ。
マルチパターニングは既存の技術だが、両社の特許は歩留まり(良品率)を上げることに成功したようだ。この特許を使えば、EUVの1世代前のDUV(深紫外線)露光装置で5ナノ級のICを量産できるという。台湾のTSMCが量産中の3ナノ級には劣るものの、かなりの先端技術だ。
サイキャリアのブースには今回、成膜、アニール(熱処理)、エッチング(食刻)などウェハー上でのIC形成に使う「前工程」装置のモックアップがずらりと並んでいた。ある日系装置メーカーの技術者は「性能の高さを想定しうる外観だった」と証言する。
SMICが量産している7ナノ級のロジックICが、この特許に基づいているとの見方もある。サイキャリアとSMICがスペアタイヤ2.0の想定する「国内2000社」の協力先に含まれることは間違いなさそうだ。
アルゴリズムを工夫
もう1つは生成AI用のロジックICの供給だ。ファーウェイは19年、AI用IC「アセンド910」の外販を開始。製造はTSMCに委託していたが、第2世代の910BからSMICに切り替え、現在は910Cの出荷に入った。この分野の世界最大手は米エヌビディアだが、米政府による対中禁輸の対象となっている製品が多い。アセンドは中国のAI用IC市場で、その穴を埋めるようにシェアを伸ばし、台湾メディアは75%に達したと報じている。
「チップの演算能力が劣るのは仕方がないため、アルゴリズム(計算手法)を工夫した」。筆者が1月に懇談した中国AI大手、科大訊飛(アイフライテック)の幹部は910Bのチューニングを進めた経緯をそう振り返った。
当初は「A100」などエヌビディア製ICの使用時の3割程度しか性能を出せなかったが、現在はほぼ同等に改善されたという。話題のAIスタートアップ、ディープシーク(深度求索)が910Cですでにエヌビディア製の6割の性能を出したとの報道もある。
ファーウェイが本業である通信機器の枠を超えて最先端ICの開発を続け、中国国内のハイテク企業群が磨き上げている構図だ。習指導部がハイテク摩擦で米政府に一歩も引かない背後で、中国の産業界は「最先端IC封じ」をかわす総合力をつけつつある。
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