Jリーグ新人研修で教えた「長く活躍する条件」 サッカー選手にコンピテンシー分析を適応

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また、ずぬけたボールコントロールやパス、シュートなどの高度なフットボールの技術をもつ天才肌の選手かどうか。そして、並外れた強靭なフィジカル、アジリティ(敏捷性)などなど天賦の資質をもつアスリートであるかどうか、などを仮説として検証してみた。

しかし、追跡調査の結果、いずれも大きな相関は見られなかった。Jリーグに入るレベルの選手は入会する時点で、誰もがそうした資質を持ち合わせていたのだ。そうでなければJリーグの選手にはなれないのかもしれない。仮説は外れた。

サッカーの理不尽さに由来する2つの力

再度調査設計をやり直した。職業適性や社会人の基礎力、さまざまなコンピテンシー分析など私がリクルート時代になじみの深かった能力要素を50 項目近く並べて、成功者に共通する要素分析を進めてみることにしたのだ。「計画性」とか「協調性」とか「分析力」とか「創造性」といったサッカーとは関係のなさそうな、就職面接の評定表に出てきそうな文言を並べてみたのだ。

このあたりは、スタッフの松沢緑が一緒に手を動かしてくれた。調査を進めているとなんと2つの能力項目が浮かび上がってきた。「傾聴力」と「主張力」に大きな相関が見られたのだ。

なぜそうなのか。多方面にインタビューを重ねて検討した結果、サッカーがどうやら理不尽な競技であることに由来するとの結論に至った。人間の足を使う競技は失敗に溢れる。プロ選手が90分プレーしても0対0で終わることも珍しくない。それはミスの多さを示している。手を使うバスケットボールなどでは、0対0というスコアはあり得ないことだ。

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