「負けた女子ボクサー」本国で批判が起きた顛末 アルジェリアのケリフ選手との対戦をめぐって
8月11日に閉幕したパリオリンピックで激しい議論を巻き起こした女子ボクシング。「男のくせに女子として戦うのはいかがなものか?」と誹謗中傷の嵐にさらされたアルジェリアのイマネ・ケリフ選手と台湾の林郁テイ選手が、それぞれ66kg級と57kg級で金を獲得した。
2回戦での対戦相手アンジェラ・カリニ選手が「ひどい」「フェアじゃない」と途中で試合放棄し、リング上で泣き崩れたことからネット上でも特に激しく中傷されたケリフ選手は、「女性蔑視、人種差別」であると、フランス当局に刑事告訴するという状況まで事は発展している。
そんな中、世界中から同情を買ったように見えたカリニ選手が、実は本国イタリアで大変な非難にさらされていたということはあまり語られていない。
ダイバーシティ問題にセンシティブな若い世代
握手を求めたケリフ選手を無視し、リングで泣きべそをかいて棄権したカリニ選手の行動をめぐって、「卑怯者」「スポーツマンらしくない」「恥を知れ」「痛いのが嫌ならボクシングなんかするな!」などなど、とにかく批判的なコメントがSNSを席巻した。
一方で、ケリフ選手を応援する声がイタリアからだけでなく、世界中の、特に女性たちから集まった。「あなたは強い女性です、身体だけでなく心も」「あなたの振る舞いはとてもかっこよかった」などの声が同選手のSNSアカウントに集まった。そして「私はイタリア人ですが、私の国がしたことを恥ずかしく思います。そしてあなたを苦しめたことをお詫びしたい」そんなメッセージも散見した。
イタリアでも保守的で年齢が比較的高い層は、大手メディアの報道を鵜呑みにして、ケリフ選手について「男なのに」とか「トランスジェンダーってどうなの?」という論調に走った。一方、若い世代たちは、そんな人々を「ignoranti fascisti」(無知なファシストたち)とバッサリ。
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