なぜ経済学者も政治家もバカになったのか? 今、日本に本当に必要な経済政策とは何なのか

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そもそも振り返ってみれば、事実上、日本の競馬界を支配している社台グループは、カナダの馬ノーザンテーストを輸入したことからすべての基礎を築いた。そして、世界一を決定づけたのは、アメリカの2冠馬であり、ディープインパクトの父であるサンデーサイレンスを購入できたからである。

当時(1990年代前半)は、最も通ぶっている競馬関係者は「欧州かぶれ」であった。種牡馬も、社台グループがイタリアから輸入したトニービン(エアグルーヴやジャングルポケットなどの父として有名)という例外はあるが、アメリカの有力種馬の輸入はハズレは少なく大当たりがあるのに対し、欧州は鳴り物入りでも期待外れが多かった。

この背景には、日本の競馬界の欧州コンプレックスがある。アメリカの中心はダート競争で、芝中心主義の日本からはバカにされている。だが、アメリカのダートは本当に泥であり、日本のダートはといえばサンド、砂で似て非なるものである。アメリカではスピードも要求され、またスタートからガンガン行くので、スピードの絶対能力、持続力のいかんなく発揮され、能力検定レースとして検定力が高い。

一方、欧州は駆け引きが大きく、スピードの絶対値もフィジカルなスタミナも試されない(その代わり、メンタルなスタミナはいちばん要求される)。サンデーサイレンスもミスタープロスペクターも、アメリカのダート競馬で検定された馬たちだ。

「欧州コンプレックス」から解放されるとき

つまり、欧州コンプレックスで目が曇った日本の競馬界は、ずいぶん回り道をしてきたのである。ようやくそこから目覚め、本当の競馬世界一の日本が実現しようとしているのである。

これは何も競馬界に限ったことではない。フランスコンプレックスで、中国への本格進出が遅れた資生堂は、本来は同国で、P&GのSK-Ⅱや、ポーラ・オルビスホールディングスのポジションをとれたはずなのに、現在は低迷中である。

ファーストリテイリングも、中国での売り上げをさらに伸ばせばいいのに、ファッションの本場は欧州、カジュアルの総本山はアメリカというコンプレックスに縛られていては、世界一をとるチャンスを今後失うだろう。

ということで、今年の凱旋門は一応応援するが、重要でない。また、日本のスプリンターズステークスの予想は、先行争いが激しくなると見込んで、ピクシーナイト(2枠3番)、メイケイエール(4枠8番)、ナランフレグ(2枠4番)の一発を期待する。

また、有力馬からはアグリに注目する。1日は、このレースを含めたWIN5(日本中央競馬会が指定した5レースの1着馬をすべて当てる馬券)を買う。9月はなんと2回も4億円超の配当が2回もでたが、私もあわよくば4億円を狙いたい。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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