先日、物価に関する日本一、いや世界一の研究家である、東京大学大学院経済学研究科の渡辺努教授にインタビューさせていただく機会があった。
それは「東洋経済オンライン」で2つの記事になった(前編「『物価が上がらなければいいのに』と嘆く人たちへ」、後編「日銀は『円安』『国債の山』『次の緩和』をどうするか」)。だが、インタビュアーの未熟さにより、インタビューの解説が必要だと感じたので、今回は筆者の理解する「渡辺物価理論」を独自に補足解説したい。
なぜ「機能不全」を解消しなければいけないのか
まず、渡辺理論の主張の中核は、以下のひとことに尽きる。
「『物価とは何か』では、ミクロの価格を蚊に、マクロの物価を蚊柱にたとえていますが、蚊が死んでしまったので、蚊柱の動きも止まったというのが私の理解です。物価安定と見間違えてはいけない」。
えっ?これだけでは、わからない? では、もう少しかみ砕こう。渡辺教授の理論体系とは以下の1~6からなる。
1 日本では1995年以降、企業が自分の製品の価格を決める力を失った
2 その結果、市場経済の中核である「価格メカニズム」が機能不全に陥 った
3 このコストはとてつもなく大きい。これが長期に定着すれば、実体経済へのダメージはさらに拡大、長期化する
4 だから、かなりの副作用があったとしても、価格メカニズムの機能不全を解消しないといけない
5 そのためには、社会全体、経済全体の認識を変えるために、マクロの 政策変更が必要であり、有効である可能性がある
6 そのためには、ショック療法的な手段も試してみる価値はあるし、試すべきだ
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