「断捨離」をした日銀は7月末にどう動くのか 渡辺努・東大教授の「物価理論」を解説しよう

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日本では1995年以降、市場経済の中核である「価格メカニズム」が機能不全に陥ったことで実態経済が大きなダメージを受けた、と解説する東大・渡辺努教授。「渡辺物価理論」を改めて解説する(撮影:梅谷秀司)

先日、物価に関する日本一、いや世界一の研究家である、東京大学大学院経済学研究科の渡辺努教授にインタビューさせていただく機会があった。

それは「東洋経済オンライン」で2つの記事になった(前編「『物価が上がらなければいいのに』と嘆く人たちへ」、後編「日銀は『円安』『国債の山』『次の緩和』をどうするか」)。だが、インタビュアーの未熟さにより、インタビューの解説が必要だと感じたので、今回は筆者の理解する「渡辺物価理論」を独自に補足解説したい。

なぜ「機能不全」を解消しなければいけないのか

この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています【2024年1月5日編集部追記】2024年1月1日、山崎元さんは逝去されました。心から哀悼の意を捧げ、ご冥福をお祈りします)。記事の一覧はこちら

まず、渡辺理論の主張の中核は、以下のひとことに尽きる。

「『物価とは何か』では、ミクロの価格を蚊に、マクロの物価を蚊柱にたとえていますが、蚊が死んでしまったので、蚊柱の動きも止まったというのが私の理解です。物価安定と見間違えてはいけない」。

えっ?これだけでは、わからない? では、もう少しかみ砕こう。渡辺教授の理論体系とは以下の1~6からなる。

 1 日本では1995年以降、企業が自分の製品の価格を決める力を失った  
 2 その結果、市場経済の中核である「価格メカニズム」が機能不全に陥 った
 3 このコストはとてつもなく大きい。これが長期に定着すれば、実体経済へのダメージはさらに拡大、長期化する
 4 だから、かなりの副作用があったとしても、価格メカニズムの機能不全を解消しないといけない
 5 そのためには、社会全体、経済全体の認識を変えるために、マクロの 政策変更が必要であり、有効である可能性がある
 6 そのためには、ショック療法的な手段も試してみる価値はあるし、試すべきだ
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