「断捨離」をした日銀は7月末にどう動くのか 渡辺努・東大教授の「物価理論」を解説しよう

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確かに価格の機能不全のコストは大きい。だから、筆者は3については80%賛成できる。ただ、その中身は、渡辺教授と筆者では少し違う。渡辺教授はこう言う。

「企業は通常、価格を決めるパワーを持っているわけですが、それが奪われてしまった。そうすると企業は、何か新しい商品を作るために投資して、高い価格をつけて儲けることができません。最初からいい商品を作ることをあきらめる。価格をコントロールできない環境では、企業はアグレッシブな行動ができなくなってしまう。それでも当然、収益を上げなければいけないので、じゃあコストカットとなって、経済がどんどん後ろ向きに回ってしまう。これがデフレの最大の弊害だと思っています」。

筆者は違うと思う。これは企業がデフレを言い訳にして何もしていないだけだ。新しい製品なら新しい価格が付く。既存の製品の価格が変えられないからこそ、アグレッシブに新しいことをする。不況こそが次への脱皮を促す。だから、原因はデフレではなく、個々の企業が原因だと思う。

大きくなった「為替の歪み」をどうすべきか

さらに、4「かなりの副作用があったとしても、価格メカニズムの機能不全を解消しないといけない」5「そのためには、社会全体、経済全体の認識を変えるために、マクロの政策変更が必要であり、有効である可能性がある」6「そのためには、ショック療法的な手段も試してみる価値はあるし、試すべきである」という4~6の主張に対しては、前出のとおり、筆者の賛成率は0%である。大反対だ。

4から6は一体となっている主張だが、筆者はそれぞれ反対するところがある。まず、4だ。渡辺教授はこう言っている。

「僕は、価格が動かないことで実体経済が歪むコストが大きいから、金融市場では少々のことが起きても仕方がないと思っています。

少々のこと、というのがどの程度か、ということが問題だが、この文脈では、金融市場とは為替の話だった。筆者としては、為替の歪みはとてつもなく大きく、かつ金融政策により生じてしまった責任があると思うし(つまりやるべきでなかった)、一方で、今後円安を止める力もあると思っている。

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