そして5は、もっとも意見が異なる。渡辺教授は、このように主張する。「社会全体が共通の認識として「価格は変わらないもの」と信じてしまっていて、個々の企業が解決できる問題じゃなかったんです」。
つまり、この価格メカニズム機能不全現象が、個々の企業ではどうしようもない。消費者を中心として社会全体が、価格は変わらない、と思ってしまっているから、マクロで社会全体の意識を変えなければいけない、と思っている。
一方、筆者の意見は、企業も消費者もみんなが萎縮した形で均衡しているのだから、マクロの金融政策では抜け出せず、企業が行動を変えるようなインセンティブを与えるとか、ミクロ政策を打ち出さないと効かないのでは、というものだ。
ミクロで解決すべきか、マクロで解決すべきか
180度違うというよりは、ミクロで解決すべきかマクロか、という話。実際、価格メカニズムが死んでいるというのが問題、という点は、120%一致している。対談でも以下のようなやりとりがあった。
小幡 「(機能不全の)状況を壊さなければいけないことはわかるんです」。
渡辺 「問題は、マクロの金融政策で壊れるかどうか、ですね」。
小幡 「ここ数年でわかったのは、『円安で輸入価格が上がったのは目に見えるから、値上げせざるをえないとわかれば皆、受け入れる』ということだと思う」。
渡辺 「異次元緩和は実は、それと似たことを政策的にやりたかったけれど、消費者や企業経営者に影響を与えるようなメッセージは出せませんでした。人間が行う政策よりも、パンデミックや戦争のほうが定常状態を変える力としては強いんだろうなと思います」
筆者の感想としては、そう思っているなら、なぜそれでも金融政策に、価格メカニズム復活のきっかけを期待するのか、という疑問が残る。
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