中国経済の失速は数十年にわたって続くトレンド 緩やかな下り坂か、急な下り坂かの角度の違いだけ

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中国では、習近平国家主席に権力が集中しており、コロナ対策に見るように、思い切った対策を迅速に打つことができます。今回の経済失速についても、政府が適切に対応し、大事に至らずに済むかもしれません。

ただし、中国では、日本を上回るハイペースで少子高齢化が進んでいます。住宅購入の中心である25〜34歳の人口は2010年代後半にすでにピークを迎え、2022年から総人口も減少に転じました。今後は、社会保障の負担が家計にのしかかります。中国経済の失速は一過性の現象ではなく、数十年にわたって続くトレンドです。

つまり、今後の中国経済は、緩やかな下り坂か、バイデン大統領が言うような急な下り坂かという角度の違いだけで、かなり見通しが暗いことは間違いないでしょう。

日本経済にも大打撃

こうした中国経済の苦境について、日本のマスメディアでは「中国は厳しい状況のようだ」「日本化が進んでいる」と距離を置いた報道・論評が目立ちます。SNSやネット掲示板では、「中国は調子に乗っていたが、いい気味だ」「反日にうつつを抜かしている場合じゃないだろ」といった喝采や嘲笑が溢れています。

しかし、中国経済の失速は、日本にとって決して良いことではありません。日本に2つの大きな危機をもたらす可能性があります。まず、かなり確実な1つ目が、日本経済への打撃です。

日本の中国への輸出額は約18兆円(2021年)で、国別で最大の貿易相手国です。中国経済が失速すれば、自動車・機械などの輸出が減ります。失速が長引けば対中直接投資が減り、投資収益も減るでしょう。

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