VIVANTの舞台で注目「中央アジア」はどんな地域か カザフスタンなど国々に「スタン」が付く理由

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一方、気候は山岳地帯周辺を除けば樹木が育たない乾燥気候で、草原や砂漠が国土のほとんどを占める。そこで、カスピ海などの湖の水の蒸発は激しく、結果的に塩分濃度の高い湖である塩湖になる。湖なのに「海」が付される理由はここにある。

南部の山岳地帯の豊かな雪解け水はシルダリア川となり、隣国ウズベキスタンとの国境にあるアラル海へ下る。このアラル海は、1960年頃まで世界4位の大きな湖(6.4万平方キロメートル)だった。

しかし、ソ連の政策で、シルダリア川の水を農業用水として乾燥地へ流し込み、綿花・米を大規模に栽培したため、アラル海に流入する水量は激減し、湖が縮小し、現在は大部分が干上がった。

その結果、漁業・海運業などができなくなっただけでなく、気候変化や農地の塩類化も引き起こし、健康や農業へも負の影響を与えている。

◎ロシア人も多く住む「中央アジア最大の国」

面積は日本の7倍あるが、人口は7分の1以下と少ない。

カザフ人は、トルコ系遊牧民であるが、この地域が1860年代にロシア帝国の支配下となると、小麦栽培が可能な北部のカザフステップ地域にロシアの農民が大量に入植した。1930年代にソ連の構成国となると、ロシア人に加えてソ連を構成する各地からさまざまな民族が移動し、なかには強制移住させられたドイツ人や朝鮮人もいた。

このような経緯から、総人口に占めるカザフ人は約6割で、2割のロシア人を始め、他の民族も多い。そこで国語はカザフ語であるが、公用語はカザフ語とロシア語の2つとされている。宗教ではイスラムのスンナ派が約7割を占めているが、キリスト教(正教会)も2割以上である。

1991年のソ連解体により、同年に独立してカザフスタン共和国となった。

首都はアスタナ、人口約97万人

首都は当初、南東端に位置するアルマティ(カザフ語で「リンゴのある地区」の意、標高約800メートル、人口約175万人)におかれた。山岳地帯から雪解け水が得られるので、国内では比較的湿潤温暖で古くから栄えていたからである。しかし、国土開発を進める目的を背景に、1997年に国土の中央に近い乾燥地域の現首都アスタナ(標高約350メートル、人口約97万人)に移された。

独立後は、ロシアとの関係を維持しながら、中国・アメリカ・日本などとも良好な関係を築いてきた。

◎農業大国、エネルギー資源大国

乾燥気候が広がるが、草原を活用した馬、羊、ラクダ、牛を飼育する牧畜は古くから盛んで、馬の飼育頭数は世界6位(2019年)、1人当たりの肉消費量は世界1位ともいわれる。農業用水が得られる場所では、小麦、綿花、テンサイ、タバコなどがソ連時代から栽培され、穀倉地帯をもつ国でもあった。

現在は、地下資源開発・輸出が農業をしのぐ主要産業になっている。世界に占める埋蔵量・生産量は、石炭と原油のそれぞれで世界の約2%を占め、順位は10位前後であり、石油はロシア・欧州・中国などへパイプラインで輸出されている。近年は、カスピ海周辺での石油・ガス田開発を日本を含めた外国資本が積極的に行っている。

このようなエネルギー資源大国を象徴するのが、ウラン鉱の産出世界一である。原子力発電の燃料となるウラン鉱の世界産出の45%はカザフスタンで、2位のナミビア(11.9%)を大きく引き離している(2021年)。

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