「ダルビッシュの相棒」が見た非凡なる才能の裏側 元専属キャッチャーが感じてきた「一流の哲学」

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ダルビッシュ投手は「変化球はアート(芸術)だ」と語っています。10種類とも11種類とも言われる変化球を持っています。だからといって球種のサインが11種類あるわけではありません。

スライダーとカットボール、フォークボールとスプリット、シュートとシンカーといった具合に、同系統の変化球に対して私が出すサインは同じです。ダブルプレーを取りたい状況や、ボールカウントに応じて、曲がり方や落ち方をダルビッシュ投手が加減するわけです。

ダルビッシュ投手の「変化球へのこだわり」と言えば、「バッターの反応」を見るのがとても好きだったように思います。

例えば、スライダーがバッターにぶつかりそうなところからもの凄く曲がったら驚くじゃないですか。縦の速いカーブで左バッターから空振り三振を結構奪ったのですが、「バッターが反応できなかったら、反応されるまで続けよう」とか……。そのときどきの自分の投球フォームや体調に合わせて、球種を投げ分けていた記憶があります。

すべての変化球をカウント球にもウイニングショットにも使えて、レベルが高かったです。その中でもどの変化球が一番凄かったかと訊かれれば、やはり「スライダー」です。ただ、ダルビッシュ投手自身がどう思っているかは別にして、実際に投球を受けていた身としては、一番凄い球種はストレートだと思います。

2006年のプレーオフ。ファイナルステージ第1戦。ダルビッシュ投手は3対1で完投勝ちを収めました。ソフトバンクのバッターたちは、ストレート狙いの予想が当たったスイングでも、バットはことごとく空を切りました。

最後9回二死、その年リーグ最多安打をマークした大村直之選手を三振に斬って取ったストレート。バットは投球の下を少し遅れて通過しました。フォーシームのきれいな回転でホップするようなストレートを、今でも鮮明に覚えています。

パワーから生まれるテクニック

一番衝撃を受けたのは2010年からの肉体改造です。ダルビッシュ投手は2012年からメジャーリーグに挑戦するのですが、その前からメジャー仕様の肉体改造に、本格的に着手し始めました。シーズン中にもかかわらず、高重量の負荷でウエイトトレーニングに取り組み、体を大きくしていきます。

もともと細身のダルビッシュ投手は、食事やサプリメントやプロテインの摂取に気を配っていましたが、意識して食事量を増やしていきました。体のポテンシャルで勝負する。パワーがあるからこそ生まれる技術がある。

今でこそその考え方が浸透していて、大谷翔平選手も体を大きくしています。日本プロ野球界において、ダルビッシュ投手がそのはしりです。ボディビルの雑誌も愛読していて、研究して知識を仕入れていたようです。

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