トー横の若者蝕む「市販薬乱用」知られざる実情 生きづらさを抱えた子供が手を出してしまう

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この問題に詳しい国立精神・神経医療研究センターの嶋根卓也さんは、これまで何度か若年者の市販薬の乱用が横行している、歌舞伎町にあるトー横の“現場”を見にいったことがあるそうだ。トー横は居場所を求めてやってくる若者たちの溜まり場だ。

市販薬乱用
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所・薬物依存研究部心理社会研究室長の嶋根卓也さん(写真:嶋根さん提供)

「トー横で若年女性の支援をしている団体の方を通じて、市販薬を乱用している子どもたちの様子をうかがっています。いずれも14歳から16歳までの若い女性です。また、ドラッグストアの前で咳止めの空き箱が不自然に捨てられている様子も確認しました」

トー横で咳止めの空き箱を発見

嶋根さんへの取材後に筆者もトー横へ。咳止めの空き箱を見つけた。

(※外部配信先では写真や図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

トー横 市販薬乱用
トー横に向かう途中で落ちていた咳止めの空箱(写真:嶋根さん撮影)※写真は編集部で加工
トー横 市販薬乱用
筆者が見つけた咳止めの空き箱。路地脇に捨てられていた(写真:筆者撮影)※写真は編集部で加工

そもそも市販薬の乱用とはどういうものか。嶋根さんはこう説明する。

「医薬品はもともと決められた量や回数を守って飲むのが基本です。そういった規定量や回数を超えて飲むことを広い意味で“乱用”といいます。一度にたくさんの量を飲む過量服薬、オーバードーズ(OD)もその1つに含まれます。彼女たちはODすることを『パキる』と表現します」

市販薬の乱用問題に関しては、厚生労働省が今年3月の専門家の検討会で議題に挙げている。実際、こんなデータも出てきている。その1つが、埼玉医科大学病院臨床中毒センター上條吉人氏らがまとめたデータだ。

同センターなど、3カ所の救命救急センターにおける2018年と2020年の救急搬送事例を比べたところ、薬の過剰服用が1.3倍、そのうちOTC(Over The Counter Drugs:薬局のカウンター越しで購入できる市販薬、一般医薬品)に限ると2.3倍だった。市販薬に限らず薬物を過剰摂取すれば依存だけでなく、急性中毒を起こし、命にも関わることがある。

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