トー横の若者蝕む「市販薬乱用」知られざる実情 生きづらさを抱えた子供が手を出してしまう

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薬局やドラッグストアの対応の現状は、厚生労働省の「医薬品販売制度実態把握調査(令和3年度)」で明らかになっている。これは約5000件の薬局とドラッグストアを調査員が実際に足を運んで調べたもので、乱用のおそれがある市販薬を複数購入しようとしたときに「普通に購入できた」店舗が26.7%あったという。

和田さんのいる薬局では「乱用に加担しないための工夫」をしている。その1つが、“危惧される薬を置かない”という対応だ。

「当店では、乱用のおそれがある市販薬と同じ効果が期待できる別の薬、例えば漢方薬などを数種類、用意しています。状況によって『まずはこちらをお試しいただいたらいかがでしょうか』と声をかけるようにしています」

そして薬剤師である和田さん自身、対面で薬を売っている薬剤師の役割は大きいと感じている。「自分たちが販売した薬が問題になるケースがあることをもっと自覚し、どうやって防げるかを考えていかないといけない」と話す。

製薬メーカー側も対策を講じる

市販薬の乱用について頭を悩ませているのは、製薬メーカーも同じだ。

昨今は、適正使用へ向けた対策を取り組んでいる企業も出てきている。シオノギヘルスケアはこれまでの取り組み以上の対策が必要と判断、今年、適正使用の推進を目的とした新たなプロジェクトチームを立ち上げた。

現在は、サイト上の適正使用・注意喚起のポップアップ表示や、不適切使用の実態調査を始めている。また、不適切使用報告の多いとされるドラッグストアを訪問し、ヒアリングや適正使用・注意喚起を前面に記した空箱を並べるよう交渉したり、SNS情報の確認とネット上の監視活動などを実施したりしている。

担当者への取材は実現しなかったが、製薬メーカーとしてできることは何かと聞くと、以下のような回答があった。

足を運んで実態調査をしている中で見えてきたことは、乱用者の中には乱用をやめたいと思っている人がいらっしゃることです。その方が、カウンセリング等が受けられる適切な場所にアクセスできることが、この問題解決の1つのキッカケになることも見えてきましたので、乱用者のみならず、周辺関係者(家族・知人)を含めて、回復支援へのアクセスをサポートできることも関係者と協力しながら活動していく所存です。
次ページ取材で何度も出てきた言葉
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