トー横の若者蝕む「市販薬乱用」知られざる実情 生きづらさを抱えた子供が手を出してしまう

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今回の取材で何度も出てきた言葉が「生きづらさ」だ。この心理について嶋根さんがこう述べる。

「市販薬を過剰摂取している若い人たちは、“死にたい”というよりもむしろ、“このつらい状態から解放されたい”“現実を忘れたい”という気持ちが大きい」

実際、市販薬の乱用経験のある高校生は「学校生活が楽しくない」「親しく遊べる友達がいない」「悩みごとがあっても親には相談しない(できない)」「大人不在で子どもだけで過ごす時間が長い」というように、社会的に孤立状態に置かれている子どもたちが多いことも明らかになっている。

SNSの発信を見て、手を出してしまう

そんな彼らに共通しているのが、使っているのが違法な薬物ではないからか「悪いことをしている」という意識に乏しいという点だ。むしろ、透明なビニール製のトートバッグの中に市販薬の中身だけを入れ、薬をあえて友人に見せることで優位に立とうとするなど、コミュニケーションのツールとして使っているケースも見受けられる。

「SNSが情報の拡散源になっているのも大きい。嫌なことや不快な気持ちに対応するための手段としての乱用がSNSで発信されているのを見て、自分も使ってみたらハマったという子もいます」(嶋根さん)

一度依存に陥ればそこから抜け出すのは至難であり、この市販薬をきっかけに違法薬物に手を出したり、薬を購入するための費用を捻出するために性被害に遭ったりするリスクもある。

しかし、そういう話をして無理やり薬の使用をやめさせようとしても、彼らは聞く耳を持ちにくい。なぜなら、薬の使用をやめても「生きづらさ」が解決されないからだ。

だからこそ、それを踏まえた支援が必要になると、嶋根さんは言う。

「薬物問題を抱えた子たちは、自ら『助けて』と言い出せず、その気持ちを薬と一緒に飲み込んでしまっている場合が少なくありません。周囲にいる大人はそのことに気づいていくことが必要です」(嶋根さん)

過剰摂取している子たちの多くは、“薬を使いたい気持ち”と“やめたい気持ち”の間で常に揺れ動いている。

「薬をやめさせるという視点ではなく、子どもの話を聞いて悩みや生きづらさを共有する、一緒に悩んで一緒に考えるといった態度で接することで、『助けて』のハードルを下げていくことが大事なのだと思います」

鈴木 理香子 フリーライター

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すずき りかこ / Rikako Suzuki

TVの番組制作会社勤務などを経て、フリーに。現在は、看護師向けの専門雑誌や企業の健康・医療情報サイトなどを中心に、健康・医療・福祉にかかわる記事を執筆。今はホットヨガにはまり中。汗をかいて代謝がよくなったせいか、長年苦しんでいた花粉症が改善した(個人の見解です)。

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