薬不足の深層「赤字品を作れない…」製薬の本音 漢方薬まで出荷制限のドミノ倒しが止まらない

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「薬がない」。こんな言葉が医療現場で当たり前のように聞かれるようになって久しい。10月10日発売の「週刊東洋経済」は供給不安の深層を製薬メーカーと薬局の両方から浮き彫りにする。
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「今日はカロナール500ミリグラム(解熱剤)の在庫がなく納入のメドも立ちません」

9月上旬、神奈川県川崎市内にある多摩ファミリークリニックでは連日、院内でこんなチャットが飛び交っていた。

毎日、発熱だけで50人以上の患者が来ていたが、近くの調剤薬局では発熱や風邪の症状に出す薬が品薄状態になっている。

クリニックには薬局から毎日、納入のない薬の情報が伝えられる。とくに足りないのが「メジコン」を代表とするせき止めの薬だ。副院長で薬剤師の八田重雄氏は「申し訳ないけど、かかりつけ薬局で同じ成分の市販薬の購入を相談してください」と、薬を求める患者に説明することもあるという。

せき止め薬が不足

クリニックの近くにある調剤薬局を訪ねると、店内で販売する市販薬の棚の一部がぽっかり空いていた。そこには市販のせき止め薬が置かれていたが、今は在庫がないという。「平時であれば追加で入荷できるが、需要が増えて大手の薬局のほうが優先されている」と薬剤師は説明する。

八田氏は「今は代わりに(風邪の症状を和らげる)漢方薬などを処方しています」と言う。

空になりかけたせき止め薬(左)。他社製品の影響で先発薬も供給不足に(右)
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