薬不足の深層「赤字品を作れない…」製薬の本音 漢方薬まで出荷制限のドミノ倒しが止まらない
ところが、そのわずか1週間後、記者が大手医薬品卸で営業を担当する男性の元を訪ねると、困った表情で1枚の紙ペラを机に置いた。
それは漢方薬を販売するツムラが、「麻杏甘石湯エキス顆粒」という医療用漢方薬を出荷停止にするという通知だった。
出荷停止の理由について、「鎮咳(ちんがい)薬(せき止め薬)の供給不安により、代替薬として想定以上の需要が発生している」と書かれている。
「こんな調子で、販売元から突然連絡が来るんです」
嘆く卸の男性は、「昔は欠品なんて許されなかったが、今では病院や薬局に欠品を知らせるファクスを送るだけで半日潰れてしまいます」と話す。
男性の言葉どおり、都内の調剤薬局には、卸から欠品を知らせる「未納案内書」が大量に送られていた。
過剰在庫になる薬局も
ただ、一部の薬局では在庫が過剰になるケースがある。神奈川県内のある調剤薬局では、調剤室の棚の上に薬の在庫が山積みにされていた。
「次にいつ薬が入ってくるかわからないから、いつもより多く入荷している。薬がないと困る患者のために努力した結果だ」と薬局経営者は説明した。