自由診療"やせ薬"の乱発で糖尿病患者が悲鳴 医師1時間当たりのノルマがある場合も

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糖尿病薬の数々
自由診療で「メディカルダイエット」と称して処方されている糖尿病薬。米国で火がつき国内でも供給不足に発展(撮影:梅谷秀司)
「薬がない」。こんな言葉が医療現場で当たり前のように聞かれるようになって久しい。10月10日発売の「週刊東洋経済」は供給不安の深層を製薬メーカーと薬局の両方から浮き彫りにする。
『週刊東洋経済 2023年10/14特大号(薬クライシス)[雑誌]』(東洋経済新報社)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

「認知症状が進む糖尿病の患者さんに、週に1度の投与でよい糖尿病薬『トルリシティ』を処方していた。だが供給が不安定になり、毎日服用が必要な別の薬に切り替えざるをえなかった」

そう嘆くのは東京都内で薬局を営む薬剤師だ。飲み忘れがちな患者には、訪問サービスで服薬を手伝うこともある。ところが週に1回の訪問で処方していた糖尿病薬が手に入らなくなったのだ。

糖尿病は、血糖をコントロールするインスリンというホルモンに異常が起こり、血糖値の高い状態が続く病気。患者は全国に1000万人いるともいわれ、うち9割を占める2型糖尿病は、遺伝的要因に食生活など環境要因が加わり発症する。網膜症などの合併症や、脳卒中などを引き起こす動脈硬化のリスクを高めるため、薬で血糖値を調節することが重要となる。

効果の高い新薬が供給不安に

しかしこれまでの薬は、毎日の投与が必要で患者の負担が大きく、効果が不十分なことも多かった。そこへ近年、投与頻度が低く、より効果の高い「GLP-1受容体作動薬」という新薬が登場。インスリン分泌を促す仕組みの薬で、トルリシティもこのタイプだ。2019年の臨床試験(治験)で心血管疾患のリスクを下げる結果が出たことも、支持されるゆえんだ。

だが今年に入り、GLP-1薬は供給不安に陥る。トルリシティを販売する日本イーライリリーは3月、国内外での需要増を理由に、新規患者への処方を制限する限定出荷を医療機関に通知。さらに5月には「在庫消尽が発生する見込み」とし、ほかの薬への切り替えを依頼する事態となった。代替薬としての需要が高まったこともあり、3月に発売したばかりのGLP-1薬「マンジャロ」も8月に限定出荷に至る。いずれも解消の見通しは立っていない。

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