エヌビディア「AI用チップ」で圧勝するまでの軌跡 単なるチップ以上の価値を生み出している
影響力をさらに高めるために、エヌビディアは、最近は巨大テック企業との協力関係の強化や、自社のチップを利用する目立ったAIスタートアップへの投資も行っている。その1社がインフレクションAIだ。同社は6月、エヌビディアやその他の投資家から13億ドルの資金提供を受けたと発表している。この資金は2万2000個のH100チップ購入の財源として役立った。
インフレクションのムスタファ・スレイマンCEOはエヌビディアの製品を使用する義務はないが、競合他社は他に現実的な選択肢を提供してくれないと語っている。「互角の企業は存在しない」と同氏は語る。
エヌビディアは最近、コアウィーヴのような新興のクラウドサービスにも現金と不足しているH100を投入している。インフレクションのハードウェアを運用し、4万5000個以上のエヌビディア製チップを所有するコアヴィーヴは、さらに多くのチップを購入するために、今月23億ドルの負債を調達した。
顧客との競争もいとわない
エヌビディアのチップの需要を踏まえると、同社は誰がどれだけのチップを手にするかを決めなければならない。こうした支配力は一部のIT企業経営者を不安にさせている。
「非常に重要なことは、ハードウェアがAIのボトルネックとなったり、あるいはゲートキーパーとなったりしないことだ」と、エヌビディアやその競合他社と協力している言語モデル用オンラインレポジトリ、ハギング・フェイスのクレム・デラングCEOは語る。
競合他社の中には、コンピューター、ソフトウェア、クラウドサービス、訓練済みのAIモデル、さらにプロセッサーまでを販売する企業に太刀打ちするのは難しいと言うものもいた。「他のチップの会社とは違い、エヌビディアは顧客とあからさまに競争することをいとわない」とAIチップを開発するスタートアップ、セレブラスのアンドリュー・フェルドマンCEOは語る。
だが不平を言う顧客は少ない。少なくとも公には。10年以上前に競合するAIチップを作り始めたグーグルでさえ、作業の一部をエヌビディアのGPUに頼っている。