外資企業におけるトラブル解決のキーマンは誰か?--グローバル時代の企業法務
ラングレー氏は少年期を沖縄で過ごし、アメリカのジョージア州立大学卒業後、東北大学大学院法学部、ジョージタウン大学大学院法学部などを修了した後、ジョージア州で弁護士資格を取得し、80年代に再び来日している。
しかしこのとき、日本では法律上、アメリカの弁護士資格での弁護士活動はできなかった(注1)。また、外国人という理由だけで日本の弁護士試験も受けることすらできなかった(注2)。
したがって、ラングレー氏の日本法人における肩書きは「上席弁護士」でありながら、企業のリーガルリスクコントロールの役割を担う法務部門総括者として働いた。
外資企業の日本法人では日本人が雇用され、人事部も日本人が占めるケースが多い。しかし、日本人同士では何とか対応できたとしても、アメリカ人の同僚や幹部、さらにはアメリカ本社との対応は難しい。特に、深刻なトラブルが起きればお手上げ状態になるのは目に見えている。
そういう場合にラングレー氏の出番がある。
「事態が悪化して裁判沙汰になる前に処理することが私のミッション(使命)でした。どうしても裁判が避けられない場合は、アメリカの事情に通じた外部の日本人弁護士(事務所)に依頼することになります。ただ、裁判のコストや時間を考えれば、上手な初期対応をすることで裁判にならないようにするのが最善の策なのです」(ラングレー氏)。
外国事情に通じた日本人弁護士
以前は国際的な場で活躍できる日本人弁護士(事務所)は少なく、相談しても徒労に終わることが多かったが、最近ではアメリカの法律事情に詳しい日本人弁護士も増えてきた。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所の宮野勉弁護士は、「慣習の違いは乗り越えることも可能ですが、法律は国によって異なるため、慎重に対応する必要があります。自分の国の法律が常識だと思うのはトラブルの解決を遅らせることになります。お互いのバックグラウンドを熟知したうえで対応しなければなりません。今後はますますグローバル化時代に対応できる弁護士が求められています」と言う。