歌舞伎町「鬼の王」が鎮座する神社が愛される理由 「願いが多い人は、そのぶん努力していける人」

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病を抱える人も多く訪れるという。その理由は、稲荷鬼王神社の「豆腐断ち」と「撫で守り」という風習にある。

参拝客が豆腐を同神社に奉納し、豆腐を断つ。そして「撫で守り」というお守りで患部をなでることで、病気が治ると言い伝えられてきた。あまりにも多くの人が訪れたため、かつては奉納用の豆腐だけで、商売が成立した豆腐屋が何軒もあったそうだ。

(撮影:梅谷秀司)

また境内には、鬼の形をした水鉢が置かれている。新宿区の有形文化財にも指定されたこの鉢に水をかけると、子どもの病気や夜泣きに効能があるとされている。だが、実はいわくつきのしろもの。かつてこの水鉢から、水を浴びる音が毎晩聞こえてきたため、持ち主が刀で斬りつけた。すると家族に不幸が続いたため、神社に水鉢が奉納されたと言い伝えられている。

早朝から夜中まで、さまざまな人が参拝に訪れる

そもそも「鬼王」がまつられたことにも由来がある。紀州熊野へ旅をした近くのお百姓が、途中で病気にかかり、鬼王権現(きおうごんげん)という神様をまつる神社を参拝。治癒したため、感謝の意を込めてこの地にあった稲荷神社に迎え入れ、合祀し、稲荷鬼王神社になったとされている。

(撮影:梅谷秀司)

歌舞伎町という土地柄か、神社には早朝から夜中まで参拝客が絶えないと大久保宮司。どのような人が訪れるのか、筆者が何度か足を運んだなかだけでも、会社員風の男性、大柄な少し強面の男性、金髪の青年とアイドル風の若い女性、年配の女性など、実にさまざまな人を見かけた。彼ら彼女らは、鬼の王にどんな祈願をしたのだろうか?

しばしば参拝に訪れるという会社員の男性(60歳)は、祈願ではなく、「今日がすばらしい1日であることに感謝します」とお礼の気持ちをいつも伝えていると話した。そうすることで心が穏やかになり、他人への感謝も自然と芽生えるのだという。鬼の王様がまつられていることについては、「菅原道真も恐ろしい神様ですし、鬼が神様でも珍しくない。その怖い存在に対して、感謝と畏怖の両方を持つのが良いことだと思います」と笑顔で続けた。

訪問介護士の女性(41歳)は、「家族の健康と疫病神・貧乏神のお祓い祈願で来ました」と教えてくれた。霊感があり、占い師もしているという彼女が、神社に訪れたきっかけは何とも不思議な縁。数十年前から夢に出てきた神社が稲荷鬼王神社だと気づき、それから新宿に来るたびに参拝しているのだそう。

「圧巻の神社だと思います。特有の祈祷方法や、歴史もそうですが、珍しい鬼さんも普通にいらっしゃいます」。彼女によると不思議な結界もあるそうで、「例えると青森県の恐山みたいな雰囲気」なのだという。

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