ちなみに稲荷鬼王神社の祭神の1人が、月夜見命(つきよむのみこと)だ。月の神様にあやかり、占いやスピリチュアル関係の参拝客も多いと大久保宮司。最近では、コロナ禍には激減していた、遠方からの参拝客や外国人も戻りつつあるそうだ。
願い事や悩みは、すべて神様に申し出るべき
稲荷鬼王神社の特徴の1つとして、願い事や悩みがたくさんあれば、すべて神様に申し出るべきという考えがある。神社によっては、願い事は1つだけ……というところもあるが、正反対のスタンスなのだという。
「家庭をお持ちの人であれば、商売繁盛のことは考えるけど、子どもの受験は気にならない……ということはありませんよね。稲荷鬼王神社の神様は、皆様が正直な姿を見せてくれるよう望んでいます。願いが多い人は、欲が深いのではなく、すべてかなえるために努力していける人。そういう人が、神様に隠し事をするほうが不誠実になってしまうんです」
そのため祈祷を受ける際は、願い事や悩みがいくつあっても、料金は変わりませんと大久保宮司は笑顔を見せる。
2020年、新型コロナによって社会は一変した。「マスク警察」「自粛警察」なる存在も現れ、世の中は殺伐とした空気になり、人々の間には分断が生まれた。だが大久保宮司は、コロナ禍にあって、人の温かさや思いやりも目の当たりにしたという。
「ある参拝客が、病院に行きたくても行けない人のために、『千羽鶴を神様に奉納してください』と寄付をしてくださったんです。神社に千羽鶴を飾ると、お参りに来た人が『あれは何ですか?』と聞きますよね。説明すると、『思いやりのある人がいるのですね』と笑顔になる。ウクライナ戦争もあって、ギスギスしがちな世の中ですが、そのようにして優しさや温かさも広がっていったと思います」
東日本大震災の翌年には、神社として、被災地への寄付に加え、太陽を見るためのメガネ、日食グラスを送った。太陽と月が重なって見える「金環食」の時期だったため、空を見て一時でもつらさを忘れてほしい、という思いからだった。
新宿で子ども食堂を開催している団体に協力し、境内でお祭りを開催したこともある。こういった活動はすべて、「人々の喜びや苦しみに寄り添える神社でありたい」という、稲荷鬼王神社が大事にしてきた思いから生まれている。
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