広告収入重視の「X」は長続きしないかもしれない 専門家も驚く「信頼」で進化する中国SNSの凄み

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成嶋祐介(なるしま ゆうすけ)/一般社団深圳市越境EC協会日本支部代表理事。世界の最先端企業1800社とのネットワークを持つ中国テックビジネスのスペシャリスト。中央大学、茨城大学講師などを歴任。 慶應義塾大学法学部法律学科卒業。株式会社成島代表取締役。2019年から深圳市政府公認の深圳市越境EC協会日本支部の代表理事を勤める。 全世界の中小企業をつなげることを目指し、情報テクノロジー、通販分野にて日本と中国の橋渡しを行い、世界規模のグローバルECの開発に向けて活動をしている

尾原:本書にある、インフルエンサー自身の体験をそのままプランとして販売する事例は面白いですね。

カップルで、あるレストランに行きコースを満喫した後、別室に移動してサプライズでバースデーケーキが出てくる。さらに天井からフラワーシャワーが降ってくる演出もある。

こういった自身の体験談を紹介するだけでなく、「同じような演出をご希望の方のために、そのレストランとコラボしてデートプランを用意してもらいました!」と、そのインフルエンサーのオリジナルプランとして販売できる。

成嶋:ここでももちろん、成約ごとにレストラン側から手数料を受け取れる仕組みになっています。

それだけでなく、フォロワーにとっても憧れのインフルエンサーから一方的に情報を受け取るだけでなく、購入という形で直接「お礼」を返すことができます。そして、インフルエンサーの側も、フォロワーへの期待により応えようと、ますます有益な情報を提供しようとする。そして、フォロワーのロイヤリティもさらに高まっていく……といった双方向のギブ&テイクの好循環がもたらされています。

尾原:そういったインセンティブ設計で裾野を広げていくやり方が、中国のSNSではものすごく上手だと感心します。「とにかくバズらせて人々の注目を引こう」というのではなく、フォロワーとの信頼関係を地道に築きながら“健全”に稼いでいる、という印象を受けます。

「信頼関係」の力で健全に稼げる美容専門SNS

成嶋:尾原さんがおっしゃった「フォロワーとの信頼関係を築きながら“健全”に稼ぐ」という文脈で、もう一つ紹介したいのが「ソーヤング」。美容整形の施術体験をシェアし合う美容医療のプラットフォームです。

ソーヤング(新気)
2013年にサービス開始。美容整形に興味のあるユーザーが、自ら体験した美容整形サービスを紹介・評価し、シェアするコミュニティ型のプラットフォームで、美容整形について同じ不安や悩みを抱えるユーザー同士がつながる場として人気を博している。

美容整形には、「この施術は痛いのかな」「失敗したらどうしよう」といった不安が付きものです。そのユーザーの不安に対して、ソーヤングではユーザーが「実際に体験してきましたよ!」「1週間後の経過はこうです」などと、自らの体験を日記でオープンにシェアしています。

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