広告収入重視の「X」は長続きしないかもしれない 専門家も驚く「信頼」で進化する中国SNSの凄み
成嶋:その現象を、尾原さんは共著『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』(日経BP)において、「リアル世界がデジタル世界に包含され、オフラインがなくなる世界」という意味で「アフターデジタル」と呼んでいますね。
尾原:その観点で、この成嶋さんの本に登場する中国テック企業の事例に衝撃を受けたんです。あれだけの人口ボリュームを誇り、かつある種の合理主義が徹底されている中国という国では、ここまでアフターデジタルが進んでいるのかと……。ある意味、GAFA以上に進化している。
その中国テック企業の実態を、成嶋さんならではのユニークな目線で観察していて、なかなか表からだと見えない裏側の仕組みも解説してくれている。そこに驚かされました。
成嶋:ありがとうございます。私も、本書で取り上げている事例について尾原さんの見解をぜひ聞いてみたいと思っていたので、今日の対談を楽しみにしていました。
「レッド」に見るインフルエンサーとフォロワーの信頼関係
尾原:本書で成嶋さんが紹介している事例はどれも面白いのですが……例えばこの「レッド」。
成嶋:レッドは、一見Instagramと似ているのですが、Instagram以上にインフルエンサーがカテゴリーごとにかなり細かく専門分化されている。そして、それぞれのカテゴリーで信頼性の高い情報を発信することでフォロワーの支持を集めています。
尾原:それによってインフルエンサーとフォロワーの強固なエンゲージメントが構築されているんですね。
成嶋:はい。日本でインフルエンサーというと、一部のトップインフルエンサーがYouTubeやTikTokなど動画サイトで再生回数を稼いだり、企業とのタイアップでマネタイズするのが主流ですよね。
でもレッドではアプリ内にEC機能があり、インフルエンサーが紹介した商品をフォロワーがその場で購入できる。購買の成果に応じてインフルエンサーに手数料がバックされる仕組みもあるので、フォロワー数が数万人のインフルエンサーでも専門領域を生かしてうまく稼ぐことができています。