なお、「訴訟において、ChatGPTが人間の弁護士に取って代わることができるか」という問題に関する研究も行われている。ChatGPTが関連する判例の重要な事実を要約して、原告側をサポートすることができるとする研究もある(ChatGPTは弁護士の代わりになるか? 「カタツムリ混入ビール事件」の判例で検証 香港チームが発表:Innovative Tech、 ITmedia NEWS)。
法学教育も変更する必要がある
パールマン教授はさらに、法科大学院は、電子調査ツールの使用法を学生に示したのとほとんど同様の手法で、ChatGPTのようなツールを、カリキュラムに取り入れる必要がある、と指摘している。
例えば、初年度のリーガルライティングの授業や演習のプログラムにおいて、未来の弁護士が実際にテクノロジーをどのように使用すべきかを教える必要がある。
法律関係の仕事において、判例の役割は大変大きい。膨大なデータなので、必要な情報がなかなか見つからない。これに関して、ChatGPTの潜在力は大変大きい。
しかし、エラーや誤解の可能性には、つねに注意しなければならない。事故は、すでに起きている。
2023年5月、アメリカ・ニューヨークの連邦裁判所で審理中の航空機内のトラブルに関する民事訴訟で、弁護士がチャットGPTを使って作成した準備書面に、実在しない6件の判例が含まれていた。6月22日、裁判所は、スティーブン・シュワルツ弁護士に対して、5000ドル(約72万円)の罰金を科した。
この問題に対する対処も試みられている。
東大発のスタートアップ企業であるリーガルスケープは、企業の法務のデジタル変革を助け、法務部門の業務の効率化やリスク管理の強化を目指して、対話型AI「リーガルサーチAI」を開発した。このAIは、法律に関する問いに答える能力を持っており、日常の法律の相談や契約書の確認など、いくつかの業務を援助する。
同社の説明資料によると、ハルシネーションの(問題)を解決するため、質問への回答時に必ず信頼のおける法律書籍に依拠して回答させる。
同社の資料には、司法試験のある問題にチャット GPT-4 が誤った答えを出したのに対して、リーガルリサーチAIが、正しく答えたことに加え、根拠となる判例を表示している例を示している。
このため、ユーザーは安心して利用できる。2014年司法試験の短答式試験(民事系科目、会社法領域)における正答率は、ChatGPT(GPT-4ベース)は35.7%だったが、リーガルリサーチAI(GPT-4ベース)では78.6%だったという。
このAIを、法令関連の情報検索のサービスに用い、2023年秋にも市場に出す予定だとう。
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