規制に抜け穴?全面喫煙可な居酒屋が存在する訳 飲食店が「喫煙目的施設」として通る不思議

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さらに、同文書で以下のような注意喚起も行っている。

■ご注意ください!

一部の業者が、「たばこの出張販売の許可をとれば喫煙目的施設になれる(=全ての客席で喫煙ができる店のままでいられる)」などの説明とともに、出張販売の手続きを代行するなどして、飲食店に、喫煙目的施設となることを勧めているという例が、複数報告されています。

上記のとおり、飲食や遊技等を目的とした施設は、喫煙目的施設に該当しません。たばこの出張販売の手続きを行えば喫煙目的施設になれるものでもありませんので、ご注意ください。出張販売の許可は、喫煙目的施設の許可ではありません。

東京都が公表している実際の文面

東京都が国へ要望

しかし、健康増進法の規定があいまいで、事業者指導がうまくいっていないようだ。東京都が国の施策及び予算に対する提案要求をとりまとめた「令和6年度 国の施策及び予算に対する東京都の提案要求」の中に厚労省に対する以下のような要望がある(P505より一部抜粋・再構成)。

喫煙目的施設の定義や要件を明確化するとともに、疑義照会へ速やかに回答すること。
改正健康増進法が全面施行されて以降、飲食を主目的とする居酒屋等が、喫煙場所の提供を主たる目的とする『喫煙目的施設』を標榜する例が多数発生し、都や保健所等への情報提供や苦情が増加している。
都は国に対し、繰り返し、喫煙目的施設の定義や要件の明確化を求めるとともに、関連する疑義照会を行っているが、その明確化がなされず、現場は苦慮している。喫煙目的施設の定義や要件については、法の規定の根幹を成す部分であり、保健所設置区市からも国が判断を示すべき、との意見が寄せられている。
多くの疑義が生じている喫煙目的施設の定義や要件、疑義照会への回答への迅速な対応、制度開始前から更新されていないQ&Aの整備など、全国統一的に適切な対応ができるよう、引き続き、国の技術的支援が必要である。

東京五輪という世界規模のイベントもあり、禁煙施策も世界に後れてはならないということで急速に進んだが、禁煙推進慎重派の声もあり、法律に曖昧さが残っていること、2021年の開催から2年が経ち、「外の目」を気にしなくなり、国民の関心も低くなっていることが、こうした全面喫煙可能な店舗存在の理由であろうか。

飲食を伴う喫煙目的施設はシガーバーのイメージ通り、調理を伴わないスナック類等とお酒を出すだけの店舗に限定すべきだ。 そうした施設の存在自体が、喫煙ルールを順守する効果も生み出すだろう。喫煙目的施設のあり方を改めて考えるべきだ。

細川 幸一 日本女子大学元教授

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ほそかわ こういち / Koichi Hosokawa

専門は消費者政策、企業の社会的責任(CSR)。一橋大学博士(法学)。内閣府消費者委員会委員、埼玉県消費生活審議会会長代行、東京都消費生活対策審議会委員等を歴任。著書に『新版 大学生が知っておきたい 消費生活と法律』、『第2版 大学生が知っておきたい生活のなかの法律』(いずれも慶應義塾大学出版会)等がある。2021年に消費者保護活動の功績により内閣総理大臣表彰。歌舞伎を中心に観劇歴40年。自ら長唄三味線、沖縄三線をたしなむ。

 

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