“iPodの父"「これからの日本に楽観的」と語る訳 イノベーションなき日本は変われるのか

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ネストを立ち上げたときだって、グーグルのように何十億ドルも資金があったわけではない。運で成功する人間もいれば、苦労の末に獲得した能力で成功する人間もいる、それだけの話だ。

トニー・ファデル
Tony Fadell(トニー・ファデル)/1969年生まれ。スタートアップ企業ゼネラルマジックで30年にわたるシリコンバレーのキャリアをスタート。2001年iPodの開発責任者としてアップルに入社。2007年にiPod部門シニアバイスプレジデントに就任、また初代iPhoneのハードウェアと基本的ソフトウェアの開発チームを率いる。2010年アップル退社後ネスト社を立ち上げ、2014年にグーグルが32億ドルで同社を買収。2016年にネスト退社後、現在は投資・アドバイザリー会社ビルド・コレクティブを率い、約200のスタートアップ企業にコンサルティングとサポートを行っている。(写真:早川書房提供)

イーロン・マスクだって20代には大したことはしていなかった。そう言い切れるのは、1990年代半ばにロケットサイエンスという会社で彼と肩を並べて「SEGA CD」向けのビデオゲームをつくっていた時期があるからだ。僕はゼネラルマジックの正社員だったが、会社の仕事に不満がたまって夜や週末に副業していたんだ。あの頃のイーロンはただのプログラマーに過ぎなかった。

だから今苦労している20代の人たちに伝えたいのは、行動し、失敗し、そこから学習しよう、ということだ。それが最善の学習法だ。大学を卒業したら、現実にもまれ、人間関係の機微に触れ、ストーリーテリングを習得しなければならない。

プログラミングの方法を知っている、ChatGPTを使いこなせるからといって成功できるわけではない。人間性について学び、顧客や組織を理解し、それらがどう結びついているかを知る必要がある。本書はそのためにある。

40歳で独立・起業した人もたくさんいる

――すでに30代、40代になり、新しいことを始めるには遅すぎると思っている読者へのアドバイスは。

好奇心があり、さまざまな年齢やバックグラウンドの人との対話を厭わない人なら、いつだって新しいことを始められる。人生の選択を重ね、背負っているものがたくさんある人なら、越えなければいけない壁も多くなるが、「五十にして天命を知る」という言葉もある。40歳で大企業から独立・起業した人をたくさん見てきたし、僕自身も40歳でネストを立ち上げた。

この年代の人は顧客、会社の仕組みや動かし方、どうすればうまくいくか、いかないかをよくわかっている。ゲームオーバーなんてことはない。生物学的な子供をつくるのにはタイムリミットがあるが、デジタルな子供をつくるのに遅すぎるということはない。

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