“iPodの父"「これからの日本に楽観的」と語る訳 イノベーションなき日本は変われるのか

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――日本の場合、労働市場が硬直的で、転職も少なく、アメリカと比べて起業は難しいと考える人は多い。

フランスをはじめヨーロッパ諸国についてもかつては同じことが言われていたが、ここ7、8年で大きく変わった。大勢の人が大企業を辞め、新たな会社を立ち上げている。今ではフランス生まれのユニコーンまである。ひと昔前には、誰も想像しなかったことだ。

僕が経営する「ビルド・コレクティブ」という投資・アドバイザリー会社はポルトガル、スペイン、ドイツ、フランス、スイス、オーストリア、スカンジナビア諸国、イギリスのスタートアップに投資している。いずれも好調で、世界トップクラスの会社ばかりだ。

日本にはとてもクリエイティブな人材がいるし、人口高齢化への危機感もある。大企業の力は衰え、ベンチャーマネーが流れ込んでいる。2012年~13年頃のフランスに似た、本当にすごいことが始まろうとしている空気がある。当時のフランスでは、なぜこの国からグーグルが出てこないのか、そういう企業が必要だという声が上がっていた。

今に「もういい、自分がやってやる」という若者たちが出てくる。僕の投資会社でも日本の案件を検討している。以前なら考えもしなかった。何社もの経営陣と会っているし、日本からおもしろいモノが出てこようとしているのを知っている。韓国も同じような状況だ。イノベーションは世界中のあらゆる国で起きている。

今の若い日本人は優秀

――大方の日本人以上に、日本に対して楽観的だ。

楽観的にならなかったら何も始まらない。実は1992年に僕が初めて北米から出て、旅行した先が日本だった。秋葉原に行って度肝を抜かれた。ものすごいイノベーションが起きていた。

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だが日本市場はあまりに閉鎖的で、海外に目を向けず、ストーリーを語ることもなく、ハードウェアしか見ていなかった。今の秋葉原には海外のブランドしかない。イノベーションはすべて輸入している状況だ。日本的メンタリティ、大企業病によって往年の大企業は傾いてしまった。

今の若い世代の日本人は違う。海外で教育を受けた優秀な人材が日本に戻ってきている。変化の機運は高まっていて、「なんとかしなければ」と考える若者も増えている。あとは時間の問題だ。僕は日本が変わると信じている。

前編:「iPodの父」が語るジョブズから教わった教訓

土方 奈美 翻訳家

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ひじかたなみ / Nami Hijikata

1995年慶応義塾大学文学部卒業、日本経済新聞社に入社。日本経済新聞、「日経ビジネス」で記者を務めたのち独立。2012年米モントレー国際大学院にて翻訳修士号を取得。米国公認会計士、ファイナンシャル・プランナーの資格を持ち、ビジネス書を中心にノンフィクションの翻訳を手掛ける。

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