絶景!島ゴルフが推しの五島が悩むアクセス問題 「異例の予算」でゴルフに力を入れる背景事情

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――五島CCを活用した島の活性化をしようというきっかけは?

松野尾氏:五島列島は「国境離島」ということで、雇用を生む事業や観光事業などに国から補助金が出ます。国境に面している島が無人島になっては防衛でも問題が生じます。観光事業として、五島にいらした方の滞在泊数を伸ばすために着地型旅行商品を促進しようと考えました。

五島は元々釣りで知られていましたが、ゴルフもその1つとして面白いのではという事になりました。島にあるゴルフ場でプレーしてもらえたら1泊増える、酒蔵巡りや世界遺産の教会を見てもらって、2泊、3泊と増やしていく、ということを目指しています。

――着地型旅行商品とはどういうものですか。

松野尾氏:いわゆる「オプショナルツアー」のイメージです。五島に来た方が現地で申し込めますし、事前にも申し込めます。五島にゴルフ場がある、という事を知らない方が多いと思いますので、ゴルフ場がある、プレーできるという事を認識していただけるように事業を支援していきたい。

――ゴルフで地方創生事業というのは、市でも賛否があったのでは。1900万円を予算化したとのことですが、反対はなかったですか? また、予算をどう活用していきますか。

松野尾氏:事業個別の賛否ということではなく、全体の予算案の中での採決ですので、賛成多数で可決されました。

予算は、ゴルフだけではなく、釣りも合わせた事業への支援になります。ゴルフでは今年度は、だれでも参加できるゴルフ大会「五島市長杯椿カップ」(来年2月)の開催、モニターツアーの実施やメディアへの露出などを考えています。11月、12月ぐらいには具体的な旅行商品ができる予定ですので、その告知なども行います。

予算1900万円の本気度

釣りも含めた予算とはいえ、1900万円という数字に、五島市の「ゴルフで島おこし」に対する「本気度」が見えてくる。今年5月に事業の企画募集・審査を行い、ゴルフ、釣り関連事業の業者も選定している。

五島CCの入場者は2022年で1万8540人。うち島内ゴルファーが1万2521人、島外からは6019人で、ここ数年は2:1の割合で推移している。

五島市が受け取るゴルフ場利用税交付金は年500万円ほど。日本で一番多くのゴルフ場を抱える千葉県の市原市ではゴルフ場利用税交付金は6億円超になる。

この交付金の使途は自治体の自由なのだが、『コース数日本一「市原」のゴルフで街おこしの全貌』で紹介した市原市が日本プロゴルフ協会(PGA)と連携して始める、主にジュニア育成を目的としたゴルフ関連事業でも数百万円ほどの予算だった。

それでも画期的といえるのだが、五島市はゴルフ場利用税交付金の4倍近い額をゴルフと釣りの事業活性化のために投資をしようとしている。交付金と事業支援が直結する訳ではないが、自治体予算という枠組みの中ではさらに画期的なことだ。

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