「税は財源じゃない?」100人の島に例えて解説 債務が増えても、国に力があれば危機ではない

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日本史の授業でも習う、古代の税「租庸調・雑徭」は、国が国を運営するために、国民から米や布などのモノや、土木工事や兵役などの労働力を強制回収していました。

戦時中に出された「金属類回収令」などもそうです。

国はまさに、すさまじい戦闘力(暴力)を持つ悟空と同じ存在なのです。

日本円は次のように説明できます。

<債券(日本円)>
自由(逮捕しない)をもらえる券。税として払って、「自由」を受け取ると消滅。
<債権者>
券を持っている人
<債務>
日本円を税として払った人に、自由(逮捕しない)を与える義務。
<債務者>

先ほどのエンが、日本円に相当します。

現実でも昔1円だったリンゴは、10円になり、100円になり、価格の上昇に伴って税額も上がっていきます。

通貨の価値を維持できるかは、国によって左右される

こういった前提があるので、国が日本円(債券)を発行するときは、同時に「国の債務が増える」ことになります。でもどうでしょうか。

債務が増えたからといって、「ヤバいこと」ではありませんよね。

なぜか。

国は「国民に暴力(逮捕・財産没収など)を行使する能力」を持っているからです。

いつでも「税をちゃんと払ったら、逮捕しない義務」は果たせます。

もしもその債務を果たせないことがあるとしたら、それは革命などによって「暴力の独占」を失ったときです。

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「ぶっ飛ばせる戦闘力」を持った孫悟空ならば、確実に「ぶっ飛ばさない義務」を果たせることと同じ。果たせなくなるとしたら、ケガや病気などで「戦闘力」を失ったときです。

国が滅んで、通貨が価値を失った実際の例があります。ソマリアの通貨である「ソマリアシリング」は、1990年代に内戦によって一時期、無政府状態になったことで、ほぼ価値を失いました。2000年代後半に新政府が誕生してから、「ソマリアシリング」はまた少しずつ価値を取り戻しましたが、このように通貨が価値を維持できるかどうかは、国家が安定しているかどうかによって左右されます。

ここまでは、簡単にするために「国」とひとくくりに表現しました。実際の世界では、政府と中央銀行(日本銀行)とに分かれていて、「国債」というややこしい仕組みがあります。しかし、基本的には今までの説明とやっていることは同じです。

次回はコチラ:国債は日銀が買い取る? 100人の島に例えて解説

ムギタロー 経済評論家

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むぎたろー / Mugitaro

1994年生まれ。福島県出身。経済評論家。社会基盤学や粉粒体物理学を専門とする研究者。2013年県立福島高校卒。2017年東京大学工学部卒。2022年東京大学工学系研究科博士後期課程修了。博士(工学)取得。YouTuberとして、現代貨幣理論を中心とした最新経済学を一般向けにわかりやすく解説することに定評がある。ポエトリーラッパーとしても活動中。

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