「税は財源じゃない?」100人の島に例えて解説 債務が増えても、国に力があれば危機ではない

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給付金の仕組みと豊かさの変化

ちなみに、孫悟空が

「みんなを幸せにすっぞ! 100人全員に1億エン給付だぁー!」
とやることも理論上は可能です。

ただ急にかなり物価が上がって、物価と連動して税額も上がるし、「1000万エン札」などの新紙幣も生まれるかもしれず、島は混乱するでしょう。

また1億エン給付しても、100人の島にあるモノ・サービスの質や量はまったく変わらないので、島の生活水準は変わりません。

エンという紙を配っただけでは、物理的な「豊かさの変化」は起こらないのです。

(※ただし貧富の差は是正されます。たとえば全財産が1エンだった人と、全財産が100万エンだった人の財産が、それぞれ1億1エンと1億100万エンになるので)

本当に「みんなを幸せにすっぞ!」と思うなら、孫悟空は「保育園が足りねえ? じゃあオラが保育士を高給で雇ってやる。あと、誰かここに保育園を3つ作ってくれ!」というように、物理的に島民の生活を変える政策を行う必要があります。

話はさておき。孫悟空は毎年たとえば、「今年は、税を計100エン集めて、150エンみんなに渡した」と記録することもできます。

収入が100エンで、支出が150エン。

家計簿としてみれば、赤字のようにも見えます。

が、これはただ、「新しく50エンを発行した」だけなのでなにも問題はありません。

集めた税だけを使って、孫悟空が家計をやりくりしているわけではない、
というのは、おわかりいただけたかと思います。

「税は財源ではない」し、「高額納税者が偉いわけでもない」のです。

同じことが、「国」にも言えます。

物騒な言い方になりますが、国家は「暴力を独占」しています。

国の警察や軍隊だけが、ルール違反した人を無理やり捕まえることができます。

もしもこの暴力の独占を悪用すれば、国民から「食べ物、労働力、物品」を強制的に回収することができます。

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