シニア狙う「電話使った特殊詐欺」その驚く手口 国や大手キャリアの強化対策で詐欺撲滅なるか

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050番号のIP電話は、電話回線や設置工事が不要で、申し込みからわずか数日で使用できる。加えて固定電話より安価な料金で使用できることから、利用者を大幅に伸ばしてきた。

これらのコスト面や利便性のメリットから、050番号はビジネスの開業時や新規事業開始時、事務所の移転拡張時などに広く活用されている。また、IP電話専用アプリをダウンロードしたスマホやパソコンで使用できることから、コロナ禍でテレワークを始めた企業が在宅勤務者に付与するなど、本来はとても利便性の高い電話番号だ。

一方で、その利便性を逆手に取り、特殊詐欺などの犯罪にも悪用されるケースが散見されるようになっているのも事実だ。

現行の携帯電話不正利用防止法では、050のIP電話は、契約時の本人確認義務の対象外となっていることが1つの大きな要因だろう。手軽に番号が取得でき、安価であることは、大きなメリットである反面、「使い捨ての番号」として犯行に使用されやすくもなってしまう。

詐欺などの悪用防止のため、本人確認をしっかり行っている事業者も、もちろんいる。しかし、中には特殊詐欺グループに050番号を大量に卸している悪質な番号再販事業者も存在しているようだ。過去にはそういった悪質な事業者が逮捕された事例もある。

「050番号」の規制で犯罪を未然に防げるか

このような状況を受け、行政機関や民間団体なども対策に動き出している。

総務省は6月に、これまで契約時の本人確認義務がなかった050番号のIP電話について、本人確認を義務化する方針を発表した。まずはこの方針に対する国民からの意見を受け付け、その後、法律施行規則の改正に動き出す予定だ。

また、行政機関だけでなく、民間団体も対策に力を注いでいる。

IP電話サービス提供事業者が複数加盟する「⼀般社団法⼈⽇本ユニファイド通信事業者協会(略称:JUSA)」は、総務省や警察庁と連携して、特殊詐欺などの犯罪に悪用された番号を停止する「番号停止スキーム」を2022年12月から運用している。

この「番号停止スキーム」について、2023年6月には、悪⽤された電話番号だけでなく、悪⽤した契約者や再販事業者がすでに保有する電話番号(在庫番号)を⼀括停止できる仕組みも追加された。これは、特殊詐欺に対する小さくない抑止力となるはずだ。

行政機関や民間団体により、特殊詐欺防止の取り組みは進んでいるとはいえ、犯行グループは、つねにあの手この手で抜け道を見つけ出し、ターゲットを狙っている。私たち1人ひとりが、日頃から防犯を心がけることも忘れてはならない。

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