経営において何より欠かせない情報。最も尊ぶべきは「正確さ」です。しかし強大なトップに忖度する組織においてはこの情報が歪められ、不正確あるいはトップに耳障りの良い情報だけが届くようになります。
この時点で強権組織は衰退が始まっているのですが、今回の社長や専務の言葉を聞いていると、ビッグモーター社もそうした機能不全組織であるという印象を持ちました。
戦において最も困難な闘いは、「殿(しんがり)戦」といわれます。勢いに乗って攻撃してくる敵を食い止め、味方の損耗をわずかでも減じる戦いです。つまり、殿戦は負け戦であり、勝利はあり得ないのです。勝利という希望も持てない戦闘がどれだけ過酷か、命を賭けた戦いでどれだけ不利かは想像がつくかと思います。
さらには、そうした負け戦には勝ち目がない以上、どこまで負けるかをトップ自ら策定する必要があります。損耗を最小限に抑えるには、一定の負けは織り込まなければなりません。いわば命を長らえるために、身体の怪我は忍従するという決断です。「負けは一部たりとも許さない」といった机上の空論や精神論などは通じません。
自分で自分の負けを認め、「ここまでは捨てる」という決断を下すのは、当然最も困難なものであることも間違いありません。
会見に表れた「強権組織の限界」
今回、ビッグモーター社は、信頼に基づく価格というビジネスの根底を揺るがす事態に陥りました。会見では、その負け戦でどこまで損害を少なくできるかこそ、目指すべきゴールのはずでした。
しかし実際の内容は、責任は現場の社員にあり、経営陣は不正をあずかり知らぬと断じてしまったのです。どう考えてもこれで批判が収まる訳がありません。
ビッグモーター社には、そこに考えがおよび、社長に進言する幹部がいないのが現状なのではないでしょうか。
実際の不正行為の有無はこれから明らかになるのでしょうが、経営陣の関与について調べるのはかなり難しいでしょう。だからといって経営陣の責任が無いのではありません。この最大の危機を乗り越えられず、会社が立ち行かなくなってしまえば、何も守れなかったことになります。
強権組織は打たれ弱いのです。BCP(事業継続計画)という困難な決断と判断を下すという点において、きわめて脆弱な組織状態だといえます。それがこの謝罪会見では色濃く表れていました。
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