こういった釈明・謝罪会見などがあると、よく裏で危機管理の専門家などが会見内容をコンサルしているのでは、と言われることがあります。今回、そういった方がついているのかどうかはわかりませんが、もし誰かがついていてこの内容だとすれば、首をかしげざるをえません。
わざわざ炎上をあおり、挑戦状を叩きつけるかのような、とても考えられない“ずっこけオープニング”でした。
「ビジネス存亡の危機」という意識はあったのか
自動車修理のような専門的な作業は、私たち一般人では良し悪しの判断が難しいものです。なじみのディーラーや修理工場の方と、長年の付き合いの中で、ある程度言い値で修理などを依頼することは珍しい話ではないでしょう。今はネットで比較見積もりを取れるかもしれませんが、それでもその修理の必要性や価格の妥当性については、やはりプロの算定に疑いを持つことは難しいです。
何か間違いがあれば、命に関わるのが車です。専門家が出してきた技術的必要性に、疑問など持てるはずがありません。しかし今糾弾されている内容が事実であれば、ビッグモーター社が犯した不正は、この「信頼」を基本とするビジネスモデルを根底から覆すことになる重大事犯といえます。
もはや同社の出す見積もりなど信用できないと思われれば、どれだけ有名タレントを使って多額の広告宣伝をしたところで、何十万円もの修理費を払う気がなくなってもおかしくないでしょう。最悪の企業・事業ブランド失墜が起こってしまったことは、事業継続が危ぶまれる事態ととらえるべきです。
しかし今回の会見は、「損害保険会社様」から始まる言葉のチョイスや、この期におよんで現場の責任を強調するかのような言い回しなど、著しく現状危機感を欠いたオープニングでした。「ビジネス存亡の危機」だという認識は、きわめて薄いのではないかという思いを強くしました。
また、オープニングだけにとどまらず、ずっこけるような“しくじり会見”は続きます。
兼重社長は終始、「(不正を働いた)社員の刑事告訴も考える」「(不正告発動画を投稿した元従業員に対し)自分の胸に手を当ててよく考えるべき」と社員への批判を止めませんでした。自分たち経営陣はあずかり知らぬことだったと繰り返し、自らの責任は棚上げしているかのように見えました。
さらなる反発を生むような発言が連発してしまった原因は、今回の謝罪会見における目標設定が明らかに間違ったものだからだと考えられます(この「今回目指すべきだった目標」については、後述します)。
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