ハーバードの研究で判明「幸福な人生の重大要素」 84年にわたり2000人以上を追跡調査した結果

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提案3 好奇心を強くもつ

人間関係での苦労と、人生の他の面での苦労は、原因が同じである場合が多い。つまり、自分のことばかり考えすぎているせいだ。自分がうまくやっているかどうか、望んだものを手に入れられるかどうかを心配する。自分のことに執着しすぎると、他の人の人生に考えが及ばなくなる。

よくある落とし穴だが、避けられないわけではない。人が本や映画から新しいことを学ぶときには好奇心を発揮するが、好奇心はごくありふれた日常の人間関係の改善にも役立つものだ。

他者への強い好奇心がもたらすもの

自分が二の次になるほどの、他者への強い好奇心には、生きる喜びをもたらす力がある。慣れていないと最初は戸惑うかもしれないし、努力も必要だ。他者の人生に対する本物の、深い好奇心は、大切な人間関係を育むうえで大いに役立つ。

好奇心が会話の幅を広げ、相手の知らなかった面が見えてくる。すると相手も、理解されている、認められている、と感じる。まだそれほど深まっていない関係の場合も、好奇心は重要だ。思いやる気持ちを伝え、結ばれたばかりの脆い絆を強くしてくれるからだ。

絶えず人に声をかけ、相手の話や意見を上手に引き出す人が、あなたの周りにもいないだろうか。この手の人がたいていいつも上機嫌で元気いっぱいなのは、偶然ではない。他人に積極的に関わることは予想以上に私たちの気分を改善し、幸せにしてくれる。

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「この人はどんな人で、何を大切にして生きているのだろう?」とわざわざ考えてみること。そうすれば、質問をし、答えに耳を傾け、自然に会話に乗っていけるはずだ。

何よりも重要なのは、好奇心をもつことが他者とのつながりを深くし、そのつながりが自分の人生への関わり方を深めてくれる点だ。心からの興味や関心をもてば、相手は心を開いて話してくれるし、だから相手への理解も深まる。

このプロセスは、関わっている人全員を元気にする。相手にちょっとした興味をもって一言声をかけることが、新たな喜びや新たなつながりを生み、新たな人生の道が始まる。

寛大さと同じく、好奇心も心の上昇スパイラルを生むものだ。

ロバート・ウォールディンガー ハーバード大学医学大学院・精神医学教授
Robert Waldinger

マサチューセッツ総合病院を拠点とするハーバード成人発達研究の現責任者であり、ライフスパン研究財団の共同創立者でもある。ハーバード大学で学士号取得後、ハーバード大学医学大学院で医学博士号を取得。臨床精神科医・精神分析医としても活動しつつ、ハーバード大学精神医学科心理療法プログラムの責任者を務める。禅師でもあり、米国ニューイングランド地方はじめ世界中で瞑想を教えている。

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マーク・シュルツ ハーバード成人発達研究副責任者

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Marc Schulz

ハーバード成人発達研究の副責任者であり、ブリンマー大学の心理学教授でもある。同大学のデータサイエンスプログラムの責任者であり、以前は心理学科の学科長を務め、臨床発達心理学博士課程の責任者でもあった。アマースト大学で学士号取得後、カリフォルニア大学バークレー校で臨床心理学の博士号を取得。ハーバード大学医学大学院で博士研究員として健康心理学および臨床心理学の研鑽を積んだ後、現在は臨床心理士としても活動している。

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