神宮外苑・再開発問題は「貧すれば鈍す」の象徴だ なぜ欧米では「私有地だから自由」が厳禁なのか

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そして、余剰床というのは、それまで設けられていた高さ制限や容積率などの緩和があるからこそ出てくるもので、ただ既存の建物を修繕したり建て替えたりするだけでは生まれてきませんから、再開発と高層ビル建築の問題はセットだと言うことができます。

ですから、再開発資金の捻出のために、今回の神宮外苑のような問題は必ず出てきてしまいます。空からお金が降ってくるわけではありませんので。そうした意味で、民間事業者の立場からすれば、今回の神宮外苑の開発プランはリーズナブルなものだと言えます。

他方で、この問題をより広い視野で考えてみると、東京という都市の特徴は、都心に緑が少ないことです。より正確に言うと、それなりに緑地の面積はあるのですが、都民が利用できる場所が少ないのです。

東京の地図を眺めてみればわかりますが、皇居や赤坂御所を一般人が利用できないのは当然として、明治神宮内苑も利用がかなり制限されています。青山墓地も都民の憩いの場にはなり得ませんし、日比谷公園や新宿御苑も立ち入り禁止の場所ばかりです。

マンハッタンの中心に人々の憩いの場としての巨大なセントラルパークがあるニューヨークや、ハイドパークなど多くの公園を擁するロンドンと比べると、こうした東京の過密ぶりと緑のなさは目を覆いたくなるばかりです。

六本木ヒルズや麻布台の再開発の意義

東京の地図をさらに詳しく見てみると、再開発が必要な場所とそうではない場所があることがわかります。例えば六本木ヒルズですが、この再開発が完成する前にあそこに何があったかを思い出せる人はいるでしょうか。そして、今まさに竣工を迎えようとしている麻布台ヒルズについても同様です。

両地域とも、小さい木造家屋が密集した道路の狭い区域で、万が一火事があっても消防車も入れないような、吹き溜まりのような場所だったのですが、そのことは恐らく誰も覚えていないでしょう。

高層ビルに批判的な人が多いのは理解していますが、それと引き換えに六本木や麻布台は安全な街と多くの緑を手に入れたのです。

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