「君たちはどう生きるか」に若者が共感する深い訳 吉野源三郎とジョブズが訴える「人生の主体性」

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「生きる」ことについて、子供向けの道徳哲学書『君たちはどう生きるか』を題材にして考えてみます(写真:ペイレスイメージズ1/PIXTA)
現在、学校教育のみならずビジネス社会においても「教養」がブームになっている。その背景には何があるのか。そもそも「教養」とは何か。
ベストセラー『読書大全』の著者であり、「教養」に関する著述や講演も多い堀内勉氏が、教養と生きることの意味について論じる、好評シリーズの第6回。

今回は、これまで繰り返し語ってきた「生きる」について、戦前に出版され今日まで読み継がれている、子供向けの道徳哲学書『君たちはどう生きるか』を題材にして考えてみたいと思います。

本書は、少年少女に自由で進歩的な文化を伝えるために、作家の山本有三らが中心となって編集された子供向け教養叢書「日本少国民文庫」の最終刊として、1937年8月に出版されたものです。

この叢書は、当時、山本が長男に読ませるための良い本がなかったことから企画されたそうで、1935年から1937年にかけて全16巻が刊行されました。

編集主任を務めたのが、戦前・戦後を通じて編集者として活躍した吉野源三郎です。吉野は、戦後、岩波書店に入社して岩波新書を創刊したほか、雑誌『世界』の初代編集長も務めました。

進歩主義的・自由主義的な書

「日本少国民文庫」の「少国民」というのは、「天皇に仕える小さな皇国民」という意味ですが、言論・出版の自由が制限されていた当時の時代状況にあって、人類の進歩という共通テーマによってまとめられた、驚くほど進歩主義的・自由主義的な内容になっています。

吉野は満州事変が始まった1931年に治安維持法違反で逮捕され、1年半ほど投獄されています。

しかも1937年8月といえば日中戦争が始まった翌月ですから、軍国主義が広まり、社会全体に閉塞感が漂う中で出版された稀有な本ということができます。

本書はむしろ戦後に売れ行きを伸ばし、今年7月には岩波文庫版の発行部数が累計180万部となり、長らく1位だった『ソクラテスの弁明』を超えて岩波文庫歴代1位となりました。

また、初版から80年後の2017年に出版されたマガジンハウスの漫画版も235万部の大ベストセラーになっています。

ストーリーはまったく別ですが、今年7月に、本書をモチーフにした同名の映画を、映画監督の宮崎駿が制作・公開したことも、再び売れ行きを伸ばしている理由のひとつです。

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