本書の最後で、著者の吉野は読者に対して次のように語りかけます。
「コペル君は、こういう考えで生きてゆくようになりました。そして長い長いお話も、ひとまずこれで終わりです。そこで、最後に、みなさんにおたずねしたいと思います。――君たちは、どう生きるか。」
まさにこれから太平洋戦争が始まろうとしている軍国主義下の日本で、一人ひとりに主体的な生き方を問いかけるこのような小説が出版されたこと、そしてそれが今日にまで読み継がれるベストセラーであり続けていることに、驚きと感動を覚えます。
より本質的な「生きることの意味」を探し求めている
あれから80年以上が経った今、私たちが置かれている社会の現状を目の当たりにして、若者たちがこの本に強い共感を覚える気持ちはとてもよく理解できます。
皆、もはや受験やビジネスなどの小手先のテクニックやノウハウなどではなく、より本質的な「生きることの意味」を探し求めているのではないでしょうか。
ただ周りの人たちに忖度し世間に迎合するのではなく、世の不条理に正面から向き合い、それを自分なりに考え、自分なりの解を導ける大人になろう――こうした当たり前のことが現代の若者たちの心にここまで強く響くのは、逆に、そうでない大人がいかに多いかということの証左ではないかと思います。
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