1分刻みの食べ放題店が生まれた本当の理由 「食事を時間単位で味わう」時代が来た!

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ここに現代の食トレンドの一端を垣間見ることができる。飲食店の至上命題である美味しい料理を提供するということに加えて、「時間」という新たなベクトルが加わっている。換言すれば料理に限らず、昨今はCS、いわゆる顧客満足度(Customer Satisfaction)が重要といわれるが、飲食業界においては、さらに一歩進んだTCS=時間的顧客満足度(Time Customer Satisfaction)という新しい概念を重視しようとする動きがある。

たとえば、1時間で料理を満喫して最大の満足を得たとする。だが、2時間拘束されて2倍の料金だったら、1分あたりの料金は同じでも1分あたりの満足度は低下してしまう。そうならないためには、お客自身が最大の満足を得た時間で出られるようになればいい。その意味で、食べ放題スタイルにおける1分単位での料金システムは非常に理にかなっているといえよう。

ネットカフェやカラオケのような概念

TCSという概念は、料理以外では以前から導入されていた。最たる例はインターネットカフェだ。一定時間経過後は1分あたり、もしくは10分あたり幾らという料金設定が基本で、利用した時間分だけ対価を支払う。この考え方は、大きくいえばカラオケボックスもしかり。1時間毎の料金設定などに、端的に表れている。

一方で、TCSという概念は料理業界においても、特段、今に始まったことではない。戦略的というよりも、結果的に結びついているといったほうが分かりやすいかもしれない。最たる例は「立ち呑み」店だ。

「立ち吞み」店が並ぶ大阪・天満

たとえば大阪市のJR天満駅周辺。「立ち呑みの聖地」と呼ばれ、約50軒が存在する。いわゆる「センベロ」という表現があるとおりリーズナブルで、生ビールなどのお酒と、ちょっとした料理数品で1軒あたり1000円程度で楽しめてしまう店も少なくない。

この類の店舗では1人当たりの滞在時間は、30分~1時間程度が一般的。ダラダラ居続けるよりも最大の満足度の時間で切り上げ、そして数軒回る。店舗側も1人あたりの単価が安いという欠点があるものの、回転率が高まることで採算を保てる。

これが可能となった最大の要因はまさに「スタンディング」。すなわち立って飲食を行うスタイルだ。着席型の居酒屋と違い、椅子が無く、立っているので、そんなに長くは滞在しづらい。「食事を時間単位で味わう」。そんな時代になっている。

はんつ遠藤 フードジャーナリスト

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はんつえんどう / Hantsu Endo

1966年東京都葛飾区生まれ。東京在住。早稲田大学教育学部卒業。海外旅行雑誌のライターを経て、テレビや雑誌、書籍などでの飲食店紹介や、飲食店プロデュースなどを行うフードジャーナリストに。ライターとして執筆、カメラマンとして撮影の両方を1人でこなし、取材軒数は8000軒を超える。『週刊大衆』「JAL(Web)」などに連載中。また近年は料理研究家としてTVラジオ雑 誌などで創作レシピを紹介している。著書は『はんつ遠藤のうどんマップ東京・神奈川・埼玉・千葉』『おうちラーメン かんたんレシピ30』『おうち丼ぶり かんたんレシピ30』『全国ご当地やきとり紀行』(以上、幹書房)など。

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