ツイッター対抗馬「スレッズ」移行へ"3つの不安" ユーザー置き去りの「気持ち悪さ」が最大の障壁

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ただここで理解すべきことは、スレッズの登録がここまで短期間で増えた一つの背景要因がインスタグラムのアカウント経由で登録できたことです。インスタグラムの世界のアクティブユーザー数は10億人いますから、その1割が「とりあえずスレッズを試してみた」わけです。

そして「では残り9割もスレッズを始めたら勢力はいったいどうなるだろう?」というのがこれから先の関心事です。

さらにいえば同じくメタが運営するフェイスブックは世界のアクティブユーザー数は30億人とさらに多いわけで、その意味ではまだメタにはフェイスブックからスレッズにユーザーを流入させる力も温存しています。既存のSNSのユーザー数を武器にスレッズがツイッターを補完するという未来はありえるわけです。

マスク氏に訪れる「意味不明の未来」

ただし私たちにとって本当に重要なキーワードは「日本では」どうなるのかとういう視点です。

実はツイッターの利用者を国別で見ると、アメリカが1位で7700万人、そして日本は5900万人でアメリカに次ぐ第2位なのです。一方でインスタグラムはアメリカ1億7000万人であるのに対して日本は3300万人という状況で、日本ではインスタはそれほど強くはないという現実があります。

仮にアメリカではフェイスブック、インスタグラムからスレッズへのユーザー移住が本格的に起きて、スレッズがツイッターを補完する地位を手にしたとしても、日本はそうならない可能性があるということです。

さらに言えばメタからすると、短文投稿アプリでアメリカでツイッターを逆転した後に狙うべき重要市場は、ヨーロッパとインドなどのアジア圏が優先されるはずです。SNSは基本的に国ごとに勢力図が違うわけで、韓国ではカカオトークが優勢ですし中国ではウィーチャットなど国産SNSが主流です。

その流れで世界的にはツイッターが駆逐されても、日本だけガラパゴス的にツイッターが有力な短文投稿SNSとして生き残るというマスク氏にとっては意味不明な未来が訪れてもおかしくはないのです。

さて、このようにまとめてみたうえで改めて感じることは、今回の騒動は結局のところ私たちユーザーを置き去りにして起きているおかしな騒動であるということです。だからこそ、この先どうなるのか不安定で、しばらくの間、私たちは不自由を感じながらツイッターとスレッズ両方をしかめっ面をしながら利用することになるでしょう。

確実に予測できることはただ一つ「明日の私はSNSに対して不機嫌だろう」ということだけなのです。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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