劇場版「TOKYO MER」36歳監督語る大ヒットの裏側 2023年の上半期実写1位、興行収入44億円突破
本作のキメ台詞でもある「死者ゼロ」は、大災害においてはおおいなるフィクションであり、理想と希望だと思っています。だからこそ、そこに至るまでの過程に嘘が見えたらいけない。登場人物たちが災害現場で人の命を救っている所作の1つひとつのリアリティーは、絶対に保たないといけない。
とても大変なことだと思いましたが、鈴木亮平さんをはじめキャストのみなさんが「医療従事者としてのリアリティー」をしっかり体現してくれたので、きっと大丈夫だと思いました。処置などのシーンはドキュメンタリーのように、一方でエンタメ要素が強いシーンは、思い切り派手に。そのバランスを大事にしていました。
――エンタメ部分のインパクトがかなり強いですが、等身大のヒーロー的なキャラクター設定も含めて、確かにバランスとしては絶妙ですね。
それを成立させたのは、キャストのみなさんと美術セットを含めたスタッフの力が大きかったと思います。私はなんでもド派手にしたがるので、そのなかで地に足をつけるための手綱を引っ張ってくれた感じはありました(笑)。本当にキャスト、スタッフ陣に恵まれました。
――さまざまな要素や素材を1つの作品にまとめあげた、松木さんの監督としての手腕も大きかったのではないでしょうか。
各セクションのスタッフが、私が思っている以上のものを提示してくださって。もっとやろうと引き上げてくれた一面もありました。私がまとめあげたというより、私の指針に対して“上乗せましまし”で応えてくれたことが大きいと思います。
映画とドラマ制作の違い
――ドラマではなく映画だからできたことはありますか?
ベースのフォーマットはドラマと基本同じですが、大きなスケールで描けたこと、そして、ドラマを見ていない人でも楽しめるように、新キャラクターを含めたこれだけ多くの登場人物の1人ひとりに見せ場が作れたのは、映画ならではだなと思いました。
制作面では、ドラマは撮影が終わって放送まで1~2日というスケジュール感だった一方、映画はCGや音楽を入れて編集する時間が十分あり、余裕を持って作り込めました。逆に言うと、ドラマは撮影しては放送しての繰り返しで、振り返る間もなく一気に流れていくんですけど、映画は何回も見直す時間があるので、これでよかったのかと悶々とする時間も長かったです(笑)。
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