プロジェクトチームは、まずオフィスにバリスタを販売しようとする。しかし、「わかる」と「できる」は大違いというもの。1年近くかけて売ってみたが、結果はまったく振わなかった。
だが、もちろん津田さんは諦めない。「どんなにいいアイデアを思いついても、実行しなければアイデアのままです。アイデアをイノベーションにするには、最初はうまくいかなくても自分で汗をかいて動き回ることだと思います」。
ここでチームは、マシンを売りまくるというところからいったん方針を切り替える。オフィス向けに無料で配るため、モニターを募集することにしたのだ。すると驚いたことに、50人という枠に1000を超える企業から応募が殺到。津田さんは「やっぱり、このマシンは求められているのだな」という手ごたえを得ることができた。
初めての試みで手探りだった津田さんチームは、その後もどんなサービスがほしいか、足りないところはないかと、応募者に意見をもらいながら、アンバサダープログラムを開発、進化させていった。「誰しも早く大きなことがやりたいという思いはありますが、小さいことの積み重ねができなければ、大きなことはできないものです」。
着眼大局、着手小局。こうした取り組みが結実し、アンバサダーは着々と増加。現在は17万人に到達し、約120万人にコーヒーを届ける巨大な仕組みができた。2013年1月には、社内に専門部署が設置された。
否定はしないで、まずは「小さく」変える
何かを変えようとするとき、「現状の否定」から入ってしまうことがよくあるだろう。しかし、変人は否定するのではなく、変えるのがうまい。
「代々先輩方がやってきたことを壊す必要はありません。何か新しいことを1つ足してみればいいのです。初めは小さなテストでやってみて、面白ければ社内外の人がついてくる。成功するともっとついてくる。そのうちそれが主流になり、やがて仕事のやり方が変わっていくのです」
新しい提案に対して周囲を巻き込み、大きなうねりにしていくためのポイントについて、津田さんはこう語る。
「周りにどれだけ面白いと思ってもらうか。そこがいちばん大事で、アンバサダーを始めるときも『なんで昨日まで必死で売ってきたものを無料で配るねん!』という意見が出ましたが、『いやいや、売ることを否定するわけではないのです。50人に無料で配ったら、家庭用に買ったという人もたくさんいましたので』と説得しました。
そして実際に検証してみると、無料で提供しているにもかかわらず、バリスタの売り上げはどんどん伸びている。そうやって市民権を得てきました。はじめはミニマムでテストして、情報共有をしっかりして、あとは『これや!』と確信したところからの“思い”ですね」
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