ファナック、決算説明会で出た社長の"本音" 富士山麓の本社で4年ぶりに開催
富士山のふもとに広がる森林の中を黄色いバスが走り抜ける。目の前に黄色い建物で埋め尽くされた敷地が現れると、”乗客”のアナリストらが「おおっ」と思わず声を上げた。山梨県忍野村にあるファナックの本社だ。
同社は4月28日、約4年ぶりに本社で決算説明会を開催。午前10時、60人近く集まったアナリストや機関投資家の前に、黄色いジャケットを着た稲葉善治社長が会場に現れた。黄色は社長の父親で実質創業者である稲葉清右衛門名誉会長が、”戦いの色”と位置づけたもの。稲葉社長は何を語るのか。会場はある種の期待と熱気に包まれた。
「私は声が大きいので地声でよろしいですね」。冒頭、稲葉社長はそう言って笑いを誘いつつ、1時間の説明会を始めた。前期の実績や2016年3月期の見通しを10分ほど説明した後、残りはすべて質疑応答に充て、どんな問いかけにも終始よどみなく答えた。
「皆さんと話しても、業績は上がらない」
今年3月に稲葉社長が株主との対話を重視する方針を打ち出し、4月にはシェアホルダー・リレーションズ(SR)部という専門部署も設置。最低限に抑えられてきた決算や企業戦略の開示にも変化が表れており、本社での説明会の再開もその1つだ。
アナリストとのやり取りの中では”本音”も飛び出した。今後の説明会の方針を問われた稲葉社長は、「はっきり申し上げて、みなさんとお話をしていても業績は上がらない。私の時間は24時間しかないので、1時間でも2時間でもお客さんに会って信頼関係を築くことが大事。このとおり、おしゃべりですから(説明会にも)時間を取りたいが、私の責任は業績を上げることにある」。意表を突く答えに参加者たちからどっと笑いが起きた。
実際、取引のある工作機械メーカーの首脳は「稲葉社長は本当に休む間もなく働いている。山口(賢治)副社長をはじめとする役員の働きぶりもすごい」と舌を巻く。ファナックが扱う工作機械用のNC(数値制御)装置はシェア5割超で世界トップ。そして、連結営業利益率40%という驚異的な収益性は、社長以下、従業員の猛烈な働きぶりの賜物なのだろう。
アナリストらの面前で「時間がない」と言ってのけた稲葉社長だが、「半年に1度は決算説明会を開く。それでご容赦いただきたい」とフォローした。
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