ファナック、決算説明会で出た社長の"本音" 富士山麓の本社で4年ぶりに開催

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確かに既存事業は着実な上昇基調を保っている。FA(ファクトリー・オートメーション)部門が手掛けるNC装置は、中国など新興国で伸びており、産業用ロボット部門も6割のトップシェアを持つ米国が好調。欧州の取引でも現地自動車メーカーの開拓が進む。

稲葉社長は「FAのマーケットは自動車の生産台数とリンクする。将来的には少なくとも現在の倍くらいになるだろう」と予測。今後の重点地域として、「中国、インド、その次にアフリカが来る。勝てるマーケットでビジネスを展開する」と力を込めた。 

栃木県の壬生町に取得した新工場建設のための広大な産業用地(中央の三角部分)(写真は栃木県提供)

現在栃木県では2016年10月の生産開始に向け、新工場を急ピッチで建設中だ。これが完成すれば、NC装置の生産量は今の倍を確保できる。「(各市場の)基礎的な伸びに、再度スマホ特需が重なると生産が追いつかなくなる。供給責任は果たさなければならない。だからこそ栃木で建設を急いでいる」(稲葉社長)。昨年9月、用地買収を発表した当初は約500億円を投じる計画だったが、今年2月になって計画を変更し、投資額は土地と建屋を合わせて約1000億円に倍増している。

 工場内に並ぶ大量の黄色いロボット

新工場稼働までは、生産の大部分が本社地区の工場で行われる。約4年ぶりとなった説明会終了後、ロボットの部品加工工場、そして工作機械の駆動を担うサーボモーターの組み立て工場を案内する見学会も行われた。

建屋には所狭しと自社製の黄色いロボットが並ぶ。防護柵の中では昼夜を問わず、休日でもノンストップでロボットが働く。それぞれの区画は「ロボットセル」と呼ばれ、モノの形や位置を検知する「視覚センサー」、握ったり押したりする力を調節する「力センサー」を駆使しながら、加工や組み立てが完全無人自動化されている。 

本社地区でも最大規模を誇るサーボモータ工場(写真は会社案内より)

特にサーボモーター工場は本社地区でも最大規模で、1つのラインに22台、工場全体では1000台以上のロボットが稼働している。頭上にはチェーン式のコンベヤーが張り巡らされ、部品が各ラインに自動で供給される。ファナックの技術を結集した最新のロボット化工場では、40秒に1個のモーターが造られており、月産能力は12万5000台。組み立て途中のモーターにロボットが防水用の接着剤をなめらかに塗る様は、まるで人の腕が動いているようにも見えた。

自社製のロボットを使った独自の自動化ノウハウがファナックの強みであり、これが”超”のつく高収益の源泉となっている。「われわれのビジネスの基盤は製造業の自動化とロボット化。この方針は変わらない」(稲葉社長)。富士山麓にある”黄色い王国”では、数え切れないほどのロボットが、日々、生産技術に磨きをかけている。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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